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幸せの愛し方  作者: 涙目
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第六話 決意

この物語は全てフィクションであり、実在する人物、事件とは一切関係ありません。

人は案外、


答えが出ないまま生きていける。


---


好きなのか。


嫌いなのか。


許せるのか。


許せないのか。


信じたいのか。


もう信じられないのか。


---


そんなことを、


何日も考えていた。


---


考えたからといって、


答えが出るわけじゃない。


---


朝になれば会社へ行く。


彼女がいる。


話す。


笑う。


帰る。


---


それを繰り返しながら、


俺はずっと迷っていた。


---


告白するべきか。


しないべきか。


---


客観的に考えれば、


答えは簡単だった。


---


しない方がいい。


---


それが一番安全だ。


---


振られない。


傷つかない。


関係も壊れない。


会社も気まずくならない。


---


大人の選択だ。


---


合理的だ。


---


正しい。


---


なのに。


---


なぜか心だけが納得しない。


---


ある日の昼休み。


---


彼女と話していた。


---


他愛のない会話だった。


---


天気の話。


昼飯の話。


同期の話。


---


何一つ特別じゃない。


---


でも。


---


俺はふと思った。


---


この会話はいつまで続くんだろう。


---


来月かもしれない。


---


半年後かもしれない。


---


来年かもしれない。


---


でも、


いつか終わる。


---


人との関係は、


いつだってそうだ。


---


ずっと同じではいられない。


---


だからこそ。


---


急に怖くなった。


---


もし何も言わなかったら。


---


もし何も伝えなかったら。


---


俺は十年後、


何を思うだろう。


---


「仕方なかった」


と言うだろうか。


---


「大人の判断だった」


と言うだろうか。


---


それとも。


---


「あの時言えばよかった」


と後悔するだろうか。


---


答えは分かっていた。


---


きっと後悔する。


---


俺はそういう人間だった。


---


言えなかった言葉を、


何年も覚えている人間だった。


---


やらなかったことを、


ずっと引きずる人間だった。


---


だから分かる。


---


今回も同じだ。


---


逃げれば、


楽になる。


---


でも。


---


終わらない。


---


傷は浅くなるかもしれない。


---


だけど、


心のどこかに残る。


---


「もしも」


が残る。


---


その夜。


---


帰り道を歩いている時だった。


---


風が吹いていた。


---


少しだけ涼しい夜だった。


---


俺は立ち止まった。


---


空を見る。


---


月が出ている。


---


ふと思った。


---


俺は何を望んでいるんだろう。


---


付き合いたいのか。


---


恋人になりたいのか。


---


結婚したいのか。


---


未来を一緒に歩きたいのか。


---


もちろん、


そういう気持ちもある。


---


でも。


---


今、


一番大きいものは別だった。


---


伝えたい。


---


ただそれだけだった。


---


好きだったことを。


---


幸せだったことを。


---


傷ついたことを。


---


それでも好きだったことを。


---


伝えたい。


---


その瞬間。


---


胸の中で、


何かが静かに定まった。


---


ああ。


---


そういうことか。


---


俺は返事が欲しいわけじゃなかった。


---


もちろん、


もし受け入れてもらえたら嬉しい。


---


それは本音だ。


---


でも。


---


本当に怖いのは振られることじゃなかった。


---


自分の気持ちに嘘をつくことだった。


---


好きだった。


---


それが事実。


---


幸せだった。


---


それも事実。


---


傷ついた。


---


それも事実。


---


だったら。


---


全部伝えよう。


---


結果がどうなるかは、


その後だ。


---


翌日。


---


彼女はいつも通りだった。


---


明るくて。


---


少し抜けていて。


---


よく笑っていて。


---


俺の好きなままだった。


---


その姿を見て、


不思議と心が落ち着いた。


---


もう決めたからだ。


---


迷いは消えていた。


---


怖さはある。


---


もちろんある。


---


眠れなくなるくらいある。


---


逃げ出したくなるくらいある。


---


でも。


---


それでいい。


---


本気の気持ちなんだから。


---


怖くて当たり前だ。


---


昼休み。


---


一人になった時、


スマホを握る。


---


文字を打つ。


---


消す。


---


また打つ。


---


結局送らない。


---


我ながら情けないと思う。


---


でも少し笑った。


---


数日前までの俺なら、


ここで立ち止まっていた。


---


考えて。


---


考えて。


---


考えて。


---


結局何もしなかった。


---


でも今は違う。


---


不器用でもいい。


---


格好悪くてもいい。


---


震えていてもいい。


---


前へ進む。


---


それだけだ。


---


帰り道。


---


夕焼けが見えた。


---


あの日、


彼女と一緒に見た空を思い出す。


---


綺麗ですね。


---


そう言って笑っていた横顔を思い出す。


---


胸が痛む。


---


それでも、


少しだけ温かかった。


---


好きになってよかった。


---


その気持ちは、


まだ消えていなかった。


---


だから。


---


逃げるのはもうやめよう。


---


振られるかもしれない。


---


傷つくかもしれない。


---


きっと泣くかもしれない。


---


それでも。


---


自分の心にだけは、


嘘をつきたくなかった。


---


俺は彼女が好きだ。


---


その事実を、


自分で認めるために。


---


そして、


いつか胸を張って前を向くために。


---


俺は伝えることを決めた。


---


生まれて初めてではない。


---


だけど。


---


人生で一番正直な告白になる気がした。


---


(第六話・完)

お読み頂き、ありがとうございます。

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