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「――散開ッ!」
帝王の号令に反応し空中へ飛び出す。
切羽詰まった声音につい従ってしまったが、帝ランク間で使用している号令か何かだろうか。
帝王にそんな声を出させた原因はもちろん前方の多頭竜である。
4つある頭の全てが大きく口を開き光芒を集束させている。
狙う先は――やはり私か!
ご丁寧に4本全てがこちらを向いている。よほど恨みを買っているらしいな、もちろん異議は無いが。
――4本の超熱線がそれぞれ異なる軌道で迫る。
しかし着弾点は1つだけ、すなわち私だ。
私が左手を振ると眼前の空間に大きな穴が出現した。空間収納の投入口である。
狙い通り、多頭竜の放ったブレスたちは全て異空の彼方に消えていった。敵の照準が正確でありがたい。
「――げっ! こっちも⁉︎」
私がブレスをやり過ごし空間収納の展開を解除した辺りで帝王の声が響いた。
見ると2本の首が私への攻撃を断念したのか帝王に狙いを移していたのだ。
「なんのぉ!!」
おお、器用だな。
放たれた2本のブレスは2つ同時に展開された空間収納の穴に呑み込まれる。アレを使えるのが帝王と私だけなので基準は怪しいが結構難しい技術だ。
例えて言うなら右手と左手で――。
「うわっ! ちょっ! ポンさん! 見てないで助けて!」
思考を中断して目を向けると、1本のブレスを受け止める為に足を止めた帝王がもう1本の首から執拗に噛みつき攻撃を受けているところであった。
――空間収納の陰から出られない状況であるのによく躱しているな。さすが世界最強は違う。
私などはまた飛んできたブレスを無効化するので精一杯である。
それにしても首が1つだった時はブレスが天竜の硬直時間となってしまっていたのに対し、首の数を増やすことでこちらの硬直時間に変えてきている。
恐らく逆転の発想なのであろうが大したものだ。
私は再度大斧を取り出した。
天竜の特効武器とまではいかないので次までに改良案を考えておく必要はあるだろうが、今のところは最善の選択である。
次に空間収納の穴をもう1つ出して端を掴む。
そして輪投げの要領で首の1つに投擲した。
――狙い過たずブレスで帝王を狙っていた首がブレスごと穴の向こう側へとすっぽり消える。
「ナニソレ!? でも助かった!」
ブレスの標的から解放された帝王は噛み付いてきていた首に反撃を開始。よく分からない攻撃で大きく弾き飛ばすと、分身したかと見紛うほどの速度で斬り刻みついには切断してしまう。
なんだ。結局帝王も手持ちの剣で天竜を倒せるではないか。謙遜が過ぎるぞ……。
「はぁ……! はぁ……! すっごい疲れる!」
ああいや、そうでもないな。
どうやらあの動きは非常に体力を奪うらしい。
首を4本ともお任せするわけにはいかないようだ。
見ると空間収納の向こう側で錯乱して暴れる首を救出するべく、残り2本の首が空間収納の縁に噛みついていた。
――その隙にこちらも回復しておこう。
私は中級回復薬を取り出して帝王のところに向かった。




