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――1時間ほどが経過した。
周囲からは住民含め人の気配が無くなり閑散としている。
空気が悪くなるのを防ぐためかダンジョン内は少し空気の動きがあるものなのだが、それが今は無いことで違和感というか不気味な雰囲気が漂っていた。
「付き合わせてしまって済まんな」
「急にどうしたの?」
私は所在が無いので噴水の縁に腰掛けて事態の変化を待っている。
特に意識したわけでも無いだろうが、帝王も私の左側に少し空けて同じく落ち着いていた。
――考えてみれば彼とは不思議な縁である。
「いや――離反したダンジョンに本気を出させてしまったのは私だ。その後始末に付き合わせてしまっている形だからな……」
帝王は頭痛がするかのように頭を抱えた。
「うーん……。どちらかと言うとポンさんじゃなくてユーフェの後始末をしてる感じなんだよね……。それに大量発生がずっと続くのも大変だから、個人的にはこっちの方が好みの展開だね。半分ポンさんに受け持ってもらってるからむしろ楽をさせてもらってるよ?」
「……そう言ってもらえると助かる」
帝王はふと思い出したかのように私を見た。
「そういえばポンさんがここで戦う理由は何かあるの?」
考えてみれば撃破目標の情報共有くらいしかしていなかったような気がする。
「自宅で保護している子をこの都市に連れてきたのだが、色々と活動している内に何人も友人を作ってしまってな――。見捨てるわけにもいかないであろう?」
帝王は仮面から覗かせている目を少し見開くと、やがて楽しそうな笑い声を上げた。
「あははっ……! いやごめん。てっきりさ、『都市に住まう罪無き人々の命を守らねばならん』とか言うと思ってたからさ……ふふっ。意外と普通の理由で逆にびっくりしたっていうか」
「私を何だと思っているのだ……?」
まぁ確かにそれも目的の1つではあるので完全に否定はしない。
しかし動機や理由となるとその辺りに落ち着くのである。
それにしても頑張って低い声を出してまで真似なくても良かろうに……。
「――来たね」
ピシリ、ピシリ、と岩の砕ける音が聞こえる。
音源の少ない空間にそれはよく響いた。
「まさか階層の境界を砕いての登場とはな――」
厳密に言うと階層の境界ではなく階段の屋根の部分だから破壊できるのであろう。
まるで噴火する火口のように瓦礫を撒き散らしながら、白銀の巨体を持つ2体の竜が姿を現したのである。
「全く。また天竜とは芸の無いことだ」
「まぁそう言わずに。――ほら、首のところにお洒落してきてるみたいだよ。褒めてあげるのがデキる男じゃないかな?」
見ると指摘の通り、長い首を覆うような金属の鎧を装着している。
あの鎧の強度は不明だが――明らかに対策を取られているな。先ほどの討伐も観察されていたと見て間違いないだろう。
「――面白い。あの程度で私に対抗できるかどうか試してやろう」
「それ褒めてないよね? ――じゃあ、左は僕が相手するよ。右はよろしく」
そう言うと帝王は魔力の小爆発と共に高速移動を開始した。人の肉体で無茶をするものである。
さて、では私も戦闘開始といこう。




