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「――それで。そこの謎の人物は結局誰なのか教えてはもらえんのか?」
トマス氏の問いに、私は帝王と顔を見合わせてしまう。
少なくとも私が紹介するわけにもいかないだろう。
帝王は肩を竦ませると仕方なさそうに口を開いた。
「ギルドマスターの人かな? ごめんね、事情があるんだ。後で請求書送ったりしないから勘弁してくれると嬉しいな。――それに、ある程度予想がついてるなら必要ないよね?」
トマス氏は困ったように眉根を寄せると溜め息を吐く。
「全く……。確かに許可無しで他国に干渉した前例が残ると拙いか。――いいだろう、謎は謎のままにしておく。――それはそうとして確認したいのだが、都市の外は避難に適した状況か?」
やはりトマス氏も彼の正体には心当たりがあり過ぎる様子。
同じ事ができる人物は世の中にそうそう居ないので仕方ないだろう。
帝王は少し考えると首を振った。
「確かに今は外に魔獣が居ないけど――避難している最中にまた大量発生が起きたら逆効果だと思う。外には出ない方がいいね」
「やはりそうか……」
少し期待していたであろう選択肢が否定されトマス氏は残念そうに唸る。そして決断したのか同じく近寄ってきていた職員たちに指示を飛ばし始めた。
「全員都市門前の広場に避難だ! 周辺の住民への声掛けを開始しろ!」
「上の人たちはどうします?」
職員の質問にトマス氏は嫌そうな顔をした。
上の人というと国家運用をしている者たちのことであろう、何やら軋轢の1つもありそうだ。
「……念のため声を掛けておけ。言うことを聞かない場合は引き下がって構わん」
確か国家運営をしている建物も中央にあったはずだ。守護する側としては避難誘導する義務があるのであろう。少なくとも放置して逃げ出すのは悪手だ。
承知して走り出す職員を見送り、私と帝王以外の全員が行動を開始した。とにかく避難を優先するようで、対策本部の天幕すらも片付けずに置いて行くようだ。どのみち都市内であれば雨の心配は要らないだろう。
「テオはここに残るのか?」
「――ん? ああ、そうだね。もう外で大量発生を起こす余裕は無いんじゃないかな。ほら、噴水とか明らかに節約を始めてるし」
指差されて見遣ると、確かに中央にある噴水の勢いが見るからに弱まっている。その分のエネルギーがどこに回されているか想像に難くないな……。
「――というわけで、当面ここが1番の激戦地になりそうと思ってるんだ」
なるほど。彼が居るべきなのはこの中央広場か。
仮に都市の外で大量発生が再発しても、この分では大したことがない勢いだろう。帝王が強すぎて光帝の影が薄いのだが、彼女も帝ランクである。周囲の冒険者の協力は必要かも知れないがその程度の消耗で抑えることは可能であろう。
私は対策本部の天幕に近寄ると、長机や折り畳み椅子を含め天幕ごと空間収納に落としてしまう。催事用のものを流用しているくらいだ、恐らく換えの備品は無いだろう。保管しておいた方がいい。




