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ダンジョン産のブロック肉と新鮮野菜を何種類か購入して宿に戻った。種類は豊富だが量はあまり多くない。今から多少減るとはいえ食べる予定があるのがほぼフロッサだけなのであれば、別にこの量で大丈夫だろう。
「それでは――満を持して。カレー粉を作ります」
宿の広めのベランダに香辛料の樽を並べて欲しいと頼まれたと思ったらそんな事を言い始めた。
カレー粉が何なのか分からないのでとりあえず見守ることにする。危険は無かろう。
「むむっ……やはりターメリックとクミンはベースとして欠かせないか……ここからが腕の見せ所」
何やら呟きながら赤い粉を掴んで腕をくねらせながら手元の鉢に加えていく。
確かそれは店主が『大きいピーマンを粉末にしたもの』と言っていたやつだな。色付けにしかならないとか言っていたような。……大丈夫だろうか。
「初めてだから辛さは控えめに……そして香りを重視して――できたッ!」
片っ端から色々少しずつ投入していたようにしか見えなかったが、きっと何らかの基準があったのであろう。よく混ぜた鉢の中身を、フロッサは誇らしげに鉢ごと頭上に掲げた。
「調味料にしては量が多いが、どういう料理だ?」
「ジャンルとしては煮込み料理かな。コレ全部を1度に使うんじゃなくて、1回に使うのはこのくらいだよ」
フロッサは両手で分量を掬ってみせる。
「作り置きか。確かに香辛料は日持ちするな」
「それもあるけど、料理って1度に大量に作った方が味が安定するんだよね。微調整しやすいの」
ほう、そうなのか。知らなかった。
実はまだ完成ではないらしく、小麦粉を使ってルーという形にしないといけないが、設備が無いので続きは家でやるらしい。
確かに家で樽を何個も並べたら邪魔だな。そのためここでやってから行こうと考えたわけか。
樽などを片付けてから宿の部屋の内鍵を閉め、転移門を――繋ぎにくいな、そういえばここはダンジョンの中だったか……。
自室の椅子も私が魔力で作成した分身体の1種だったはずだ。座標を探り転移門を繋ぐ。
衝突事故を防ぐためには確実に誰も居ない自室へと繋ぐのが1番なのである。
フロッサと2人で音を立てないよう慎重に転移門を通り、足音を忍ばせながら部屋を出て階段を降りる。
「あっ。フロッサとポン様ニャ」
アリシアに気付かれた。さすがの聴力である。
意外にも声量が普通だな。赤ん坊が起きている時間帯であったか……。
「目的地の都市には着いたのかニャ?」
「着いたけど着いたばっかり。探索も探検もまだ全然。とりあえず都市でしか買えなさそうな肉と野菜を買って来てみた」
「うほー! 弟子が優秀で鼻が高いニャ!」
肉と聞いて査定が甘々になる残念な師匠はさておきアンナと顔を合わせるのが主目的なのでアンナの姿を探す。――居ないようだ。
留守番だったらしいアリシアに聞くと、メリルと赤ん坊と3人で買い物に出ているとのこと。出産から十数日くらいの体で大丈夫だろうか、治癒の魔術で介入しているとはいえ逞しいものだ。
フロッサは帰りを待ちつつカレールーの作成に入るとのことで、植物油を要求されたので空間収納から取り出して渡す。
私の方は宿のロビーから借りてきてある本の続きでも読むとしよう。
む? 火を点けて欲しい?
……危なそうだな。火球を設置しておくので火力は距離で調整するように。
大丈夫。爆発しない設定だ。




