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ぬうっと竜の頭が階段を覗き込む様子が見えた。
見上げてきた竜の目と私の目が合う。
――竜は口を大きく開き、そして口の中に光が収束していく。
「天竜だ! 後ろに倒れ込め!」
私自身も退がりながら冒険者たちに叫んだ。
ブレスはマズい。あれは障壁程度では防げない。
しかし事態を飲み込めず呆然としてしまっている冒険者たちの姿。
彼らには悪いが風の魔術で薙ぎ倒させてもらった。
尻餅をついた彼らの頭上を、人が数名呑み込まれてしまいそうな太さの圧倒的な熱量が貫いていく。
「――ひぃッ!」
「あわ⋯⋯死ん⋯⋯生きて⋯⋯!?」
「しっかりしろ! 距離を取れ! 奴が出てくるぞ!」
我を失っていた冒険者たちは私の警告に状況を思い出したのかハッとし、立ち上がるのは恐ろしかったらしく少し這うように距離を取ると、今度こそ立ち上がり走り出した。
腰が抜けて動けない者が居ないとは優秀である。
被害はどうかと見上げてみると、普段は擬似的な青空が見えている都市の天井が一部焦げている。
青空に突如黒いシミが出現したかのような不思議な光景だ。
少し浮きながら滑るように距離を取り振り返る。
その私の目の前、2階層へと続く階段の縁に天竜の爪が掛かった。
あの階段がもっと小さければ出て来られなかったろうに、ままならないものだ。
魔王城の時はどうやって倒したのだったか――。
そうだ――ブレスを回避し、その隙に大斧で首を狩ったのであった。
いや、それはマズい。
私が回避した先でブレスは恐らく都市を薙ぎ払う。
被害の程は目を背けたくなるほどのはずだ。
――躊躇する私を状況は待ってくれない。
のっそりと全身を現した天竜は少し辺りを見回し、私の姿を認めると正確に照準を合わせて再び口を開いた。
くっ。空間的に遮断したとて果たして防ぎきれるだろうか。
相手は天竜。時間にも空間にも干渉する能力を持つらしい、謂わば最強の竜だ。
魔王城でも最後に出てきたところを見るに、ダンジョンが咄嗟に生産できる魔獣の中では天竜が最高なのだろう。
それは裏を返せば『魔王は簡単に生産できない』という意味になるのだが、その辺りの考察は後回しだ。
――圧倒的な光の奔流が迫る。
あれをまともに受け止めるのは厳しいかも知れない。
私はブレスを上空に逸らすべく正面の空間に断層を発生させる。
斜めに受け止められた大熱量は強制的に進行方向を捻じ曲げられ、狙い通り都市の天井へと向かった。
――む、いかん。恐らくブレス自体にも空間干渉力がある。
徐々に、完全に隔離しているはずの障壁がヒビ割れていく。
即座にもう1枚展開するもブレスの継続時間が長い。
最初の障壁が破砕された後もブレスが続き2枚目が崩壊していく。
――数分にも感じる放射を受け止め切ったのは結局4枚目の障壁であった。
いやはや……何とか凌いだがこれがずっと続くのはたまらない。
見れば天竜は早くも次のブレスの準備動作に入っていた。
魔王城の時もそうであったが、あの強さの攻撃を連発できるのは厄介極まりない。防ぐ方の身にもなってほしいものだ。




