8-4
「――ダンジョンを、消滅させただと?」
トマス氏は空いた口が塞がらない様子。
南門消滅までの経緯を説明したらこうなってしまった。帝王以外には難しい程度には離れ業のようなので仕方ないか⋯⋯。
それにしても落ち着いた雰囲気の人物がこういう顔をするのは面白いものである。普段との落差がとても良い。
「新設された南門を閉じさせるには、敵側の危機感を煽る必要があると判断したのでな。まぁ⋯⋯周りの者からは『やりすぎだ』と言われたので反省もしている」
「反省も何も普通は不可能だぞ⋯⋯。まぁいい、事実として受け止めよう。――しかしそうなると、今度はその危機感を煽られたダンジョンがどういう動きをしてくるかを考えねばならんだろうな」
トマス氏は右手を顎に当て思案を始めた。
大量発生の再発以外にもいくつか候補があるのかも知れない。
「すまんな。余計な仕事を増やしたやも知れん」
「ん? いやいや、逆に読みやすくなったとも言える。それに敵の存在をはっきりと知ることが出来たのは大きい。疑惑止まりとはやはり変わってくるからな」
確かに。私も帝王から話を聞くまでは肝心な敵の姿に確信が持てずぼやけていた。
情報が足りない状況ではそうなってしまうだろう。
「それで、私に担当して欲しい場所などはあるか? 無ければ中央ダンジョン前で待機しようと思うが」
「⋯⋯まだ余力があるのか。ギルドとしても中央ダンジョン前に冒険者たちを配置する予定だ。それに加勢してもらえるとありがたい。だが、くれぐれも無理はするな」
「承知した。ではそのように動くとしよう」
都市の外で仮面の男女が頑張ってくれていることは伝えてあるので予想通りの配置である。
ただ、都市内では本気で大暴れするわけにもいかないので、ダンジョン側が私の現在地をどの程度把握しているかによっては対応を大きく変える必要が出てくるかも知れないな――。
ギルドへの報告と打ち合わせを終えたので対策本部の天幕を離れ移動する。
とはいえすぐそこの2階層への階段前に移動するだけではある。
何かが起こるまではしばらくここで待機だ。警戒をしないといけないので本を取り出して集中するのは良くないであろうな⋯⋯。
「あっ、ポンさん。お疲れ様です!」
ずっと立っているのも見栄えが良くないので、噴水へと伸びる段の1段目に腰掛けてみたところ近くの冒険者に話し掛けられた。私と同じく中央広場の待機組に回されて来た者のようだ。
「む? ああ――マーガレットか。先日は世話になったな、元気そうで何より」
「はい。お陰さまでちょっと強くなったので順調に稼げています!」
「おお、それは良かった。――そういえばあれから数日経ったが装備の更新はまだの様だな?」
「ああー⋯⋯アレは全部で7日くらい掛かるらしくて。あと3日くらいなんですけどねー。んふふー! 待ち遠しいです!」
彼女は皮製品による軽装姿のままであった。黒い骨金属製の装備が完成すればもっと強そうな格好になるだろう。本人も完成を心待ちにしているようで頬が緩みっぱなしである。少し気持ち悪い顔になっているがそれは指摘しない方が良さそうだ。




