7-7
さて、皆が居る場所の候補は出たが、手段の方が不透明である。
「インベントリから引き摺り出す方法について、何か情報は無いか?」
私の質問に帝王は戦闘を継続しながらも唸ってしまう。
「うーん……。空間うんぬんじゃなくて、ダンジョンの付属品みたいな感じみたいなんだよね……」
「付属品?」
言っている意味が分からない。
少し考えた隙を突いて雪崩れ込んできた女王蟻たちを纏めて消し飛ばす。
「うん。倉庫みたいに使えるわけじゃなくて、余った時に勝手に入るみたいな?」
――なるほど。
今回起こった事象と照合するに、強制的に起こった事態の辻褄合わせに使われるダンジョン施設の一時保管所ということだろうか。フロッサたちはその保管プロセスに建物ごと巻き込まれたのであろう。
そして『倉庫みたいに使えない』というのはどちらの意味なのだろうか。
能動的に格納することはできないが施設の設置だけはできるのか、それとも全く使用できないのか⋯⋯。
「ならば――『元の状態に戻させる』というのが恐らく近道だな」
「方法はどうするの?」
「ダンジョン都市の入口門を北側に戻したくなるよう誘導するしかないであろう。つまり南側を完全に殲滅する」
「――うわぁ、力押しだぁ⋯⋯! でも確かにそれしか無いかもね」
帝王は少し楽しそうな様子。私と違って気持ちにだいぶ余裕があるのだろう。
実際、起きたダンジョン災害を犠牲者無く受け止められている状況なのだからそれも当然だな。
「済まんがここを任せていいか?」
「もちろん。――でも長時間は厳しいかもよ?」
ふむ、膨大な魔力量を誇る帝王にも限界というものがあるか――。
「完全回復薬を10本出してやろう」
「そんなに? 人使いが荒いなぁ⋯⋯」
文句を言っているようでいて、よく見ると少し嬉しそうである。
きっと余った分を他で流用できるとでも考えているのだろう。
私が空間収納の入口を少し高い位置で開くと、その少し下に帝王の収納の入口が開いたので完全回復薬を10本直接落として放り込んだ。取り出すのが面倒だったので助かる。
「――確かに受け取ったよ。これだけあったらしばらく大丈夫そうだね⋯⋯」
「期待している。――依頼の礼に、私の本気を見せてやろう」
私の言葉を聞いて帝王の動きが一瞬止まる。
「――ん!? 聞き間違いじゃなければ、まるで『僕の前で本気を見せたことが無い』ように聞こえたんだけど?」
「そうだが?」
「いや魔王戦くらいは本気出そうよ。――魔王だよ!?」
「世界最強がそこに居るのだから必要なかろう。それに――狭い場所には向いていなくてな」
「……もしかして危ない?」
「善処しよう」
「ええ⋯⋯」
一気に跳び降りることができなかったのか途中にある装飾を伝って地道に降りてきていた光帝と、嫌そうな表情の帝王に迎撃を任せ少し後退する。
私に正体が露見していたことを伝えたのか、駆け寄って行った光帝が帝王に何かを言われて頭を抱えていた。
――さて、そうと決まれば本気を出すとしよう。
苛立ち紛れの八つ当たりではない、私の本気である。
ダンジョン――それを操る何者かが『南側はもうダメだ。作戦変更しよう』と考えてしまうくらいの圧倒的な殲滅を行なう必要があるのだから。
なお、人とは限らないが『ダンジョンを操る者』が居ることは確定である。監視役、そしてそれが得た情報による作戦変更がその証拠だ。
その者には『喧嘩を売る相手を間違えた』と痛感してもらう必要がある。
――私は神域への扉を開いた。




