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帝王と光帝はどこに現れたのか――と見回してみると、城壁の上にある通路に居た。どうやらあの上をぐるりと半周走ってきたらしい。
まぁ確かに地上から行くと魔獣の群れに阻まれて新しく開いた門に近付けないだろうと予想できる以上、比較的妥当な作戦である。
「加勢に来ました! 状況を教えてください!」
波打つように迫り来る女王蟻たちを次々に消滅させながら金髪の少年が叫ぶ。
城壁の通路から門前に跳び降りる少年に空中から近付きつつ、私の方も面の攻撃から線の攻撃に切り替えた。
「とにかく数が多い! 危うく討伐速度が追いつかなくなるところであった。助かったぞ帝王!」
私の回答に少年の手がブレる。
飛んで行った空間断裂攻撃がボストレントの残骸の1つを上下に分断した。
あの残骸には空間干渉耐性は残っていないらしい。
「て、帝王!? 人違いじゃないですかぁ!? 僕はテオといいますぅ!?」
とぼけるのが下手だな。正直者め。
「お忍びのところ済まんが、私の魔力感知能はお前を帝王だと言っている。時間が惜しいので本題に行くぞ帝王」
「うう……はい⋯⋯」
激戦の最中にあまり気落ちしないで欲しいものだ。
心配しなくても他の冒険者たちは近くに居ない。会話から彼の正体がバレることはないだろう。
「子ダンジョンから溢れた魔獣は並べた火球で食い止めている。しばらく大丈夫であろう。そして門の内側に、駆けつけた冒険者たちが防衛戦を築いてくれているはずだ。ある程度は抜けられても問題ない」
帝王は正面方向を睨んで口を開く。
手を動かしながらも状況を整理していたらしい。
「では当面の問題はアレですか――」
「あの大型ダンジョンだな。今のところはボス級の魔獣しか出てきていない非常に厄介なダンジョンだ」
「あれを破壊して来ればいいですか?」
「いや――私が行く」
背中合わせで女王蟻に対応しているのだが、少しだけこちらを窺うような仕草をしたのが気配で分かった。
「――何かあったんですか?」
どうやら私の焦りが伝わってしまったらしい。
確かに私が討伐に対して無条件に前向きなのは珍しいかも知れない。
「私の保護している者たちが行方不明なのだ。――南門の形成と共に建物ごとどこかに消えてしまった」
再びじわじわと湧き上がる怒りの感情と共に、迫り来る女王蟻を空間ごと両断する。
「――少しでも行き先のヒントが欲しい」
「なるほどね――」
帝王は口調の取り繕いを改めると少し思案を開始した。
その間も撃破する手を休めていないのはさすがだ。
「――確定ではないんだけど、もしかしたらインベントリって場所に居るかも知れない」
「インベントリ?」
「うん。ダンジョンが持っている倉庫みたいな場所のことだね。ポンさんでも居場所が分からなくて困ってるってことなんでしょ?」
「その通りだ」
2人で背を合わせながら手を動かし、互いの正面を超高速で撃破しながら会話を続ける。
どこから得た知識なのかは知らないが予測が立てられるだけでもありがたい。
「じゃあ、多分そこだね。強制的な地形変更の際なんかに、変わる場所に元々設置してあった建物とかが一時的にインベントリへ入っちゃう現象があるらしいんだ」
「強制変更の邪魔だったから退かした、というわけか……。無事だと思うか?」
「んー……。インベントリ内は時間停止らしいし、生きてる可能性は高いかなぁ」
ふむ――希望が出てきた。
心に不思議なほど余裕が生まれたのが分かる。
彼女らの存在が、いつの間にか私にとってどれほど大きくなっていたのかを痛感してしまった。
全く……彼女たちには黙っておこう。




