7-5
張っていた気を少し緩めた瞬間、それは来た。
大型ダンジョンの出入口から蟻の大群――いや、違う。
『女王蟻』の大群が噴出し見る見る間に周辺を蹂躙していく。
産卵形態になっていない、繁殖形態の巨大な蟻である。つまり機敏な動きが可能だ。
これは――。
見られているな⋯⋯。
小型の物量作戦では火球の壁に阻まれ効果が無い。
超大型を繰り出しても対処される。
――それらを見て明らかに戦法を変えてきている。
確かに火球の壁を無視して都市の壁伝いに門を目指せる大型蟻型魔獣の物量ならば門の突破に有効だろう。
何が目的かは知らんが――どうしても都市を滅ぼしたいようだな。
それにしても先ほどの空間干渉耐性を持ったトレントといい、この女王蟻たちといい、妙に対応が的確だ。全体的な更新というよりは、ここの状況に合わせて対応を変化させているように感じる。
どこかに視覚的に情報を取得する為の観察者が居ると考えるのが自然だ。
どこだ――。
見回してもそれらしい姿はない。
探知を放つも魔獣が多すぎて判別は無理であった。
⋯⋯いや、見張るなら空中か。
空に向けて探知波を打つと魔獣の反応を発見。
一連の騒ぎで空中を逃げ惑う鳥たちの群れの中に1体紛れ込んでいるようだ。
ぬう、もう少し早く気付くべきであった⋯⋯!
即座に監視用魔獣の空間座標を切り刻み処分する。
これでしばらく目隠しできるであろう。
女王蟻たちは若干の混乱を起こした気がするが変わらず門を目指して殺到してくる。壁にしていた火球も軽々と跨いでおり効果が見られないようだ。
私は即座に門前まで後退すると雷撃魔術の準備を開始した。
「――範囲攻撃行くぞ! 門の内側に引っ込め!」
「やっば!」
「おい下がれ下がれ!」
「ひえぇぇ!」
風属性の収束を始めた両手から大量の紫電が溢れ付近を明滅させる。
門前に留まっていた冒険者たちはそんな私の姿を見て慌てて門の内側へと駆け込んでいった。
――放たれた雷撃魔術が一瞬だけ世界を白1色へと塗り潰す。
超広範囲に塗布された雷光は大量の黒いモヤと共に空中へと溶け消えた。
すぐに次の雷撃を準備するも、他の魔獣とは比べものにならない速度で壁のように次の塊が迫ってくる。空間干渉は通用するだろうか――。
いや、迷っている時間的余裕はない。多方向に向けて空間断裂攻撃を放つと、幸い無効化するほどの強化はされておらず撃破できた。稼げた時間で次の雷撃の準備を整え、再度白光で広範囲を薙ぎ払う。
いかん――撃破はできるが物量が多い。
わずかに女王蟻たちが迫り来る勢いの方が強いのだ。
このままでは抜けられてしまう――その考えが頭を過った時であった。
西側から多段の空間断裂攻撃が、東から大規模な熱光線が、それぞれ眼前の戦場へと降り注ぐ。
迫ってきていた女王蟻たちは、その大部分が一瞬で消滅し一気に攻勢が弱まった。
これは――少々分かりやす過ぎるな。帝王と光帝だ。
閉じられた門前の殲滅を完了し、こちらを手伝いに来てくれたのだろう。
さすが将来作られる物語の主人公である。
いいタイミングだ。




