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7-4

 

 ――それでは本格的に黒ボストレントの攻略に移ろうと思う。


 まずは上空に展開した位相差障壁の範囲を拡大しつつ、火球による防衛ラインを正面方向にも展開する。

 こうすればトレントの攻撃で火球が破壊されるのを防げるはずだ。


 都市の南門をぐるりと囲む火球の防壁が完成。

 ついでに黒トレントへの射線が確保できた。


 ――火球を生成。

 魔力をどんどん追加で投入しエネルギー量を激増させていく。


 見る見る内に膨れ上がった家3軒分ほどの体積の火球は鉄の融点の倍ほどの温度だろうか、熱気で周囲の景色を大きく歪めている。少し体から離さないとさすがに厳しいな⋯⋯。


 これが効かなければ、大したものだ――!

 私は狙いを定めて大火球を射出した。


 高速で撃ち出された火球はトレントの樹皮に浮かび上がっている巨大な顔に向かって吸い込まれていく。

 別にあそこが弱点という確証があるわけではないのだが、他に狙うべき場所が特に思いつかなかった。


 背後に居る冒険者たちからの感嘆の声を浴びつつ飛んで行った火球は、ボストレントの顔面に直撃――そして予想に反し拮抗する。

 灼き貫くべく、爆発する設定にはしていないので挙動としてはアレで正しいのだが、私の想定よりも樹皮が頑丈らしい。やはり大黒檀製なのかも知れない。


「おいおい、直撃で倒せないのかよ⋯⋯!」

「いやよく見ろ! 効いてるぞ!」


 ボストレントは苦しげに全身を蠢かせ絶叫を上げる。トレントに声帯があることにも驚きだが、それ以前にあの状態でよく声を出せるものだ。


 抵抗を受けてはいるものの、火球は樹皮を燃やすのではなく融解させながらボストレントの体内に埋まっていき、中心部に到達した辺りでトレントの全身から急激に力を奪った。恐らくあの辺りに核となる魔力石があったのだろう。


 自在に動いていた枝葉は柔軟さを失いただの枝に戻る。樹皮からは凶悪な顔面が消え失せ、ただの大穴が空いた黒い樹木に戻った。


「すげぇ! あのデカブツを倒しちまった!」

「パねぇな⋯⋯」


 背後の冒険者たちはすっかり観戦する態勢のようだな。

 トレントが黒いモヤにならなかったのはダンジョンを出てからの時間が長かったからであろう。その辺りの法則性は気になるが調べるのは今ではない。


 ――2発目の大火球を準備開始する。

 他のボストレントも1体目が撃破されたことが分かるのか大慌てで抵抗を始めるが、残念ながら根を張って動けなくしたのは自分自身である。必死で打ち下ろされる枝は、虚しいと呼ぶには大きすぎる音を立てつつも障壁に受け止められるばかりであった。


 2発目の大火球を発射する。

 人間に比べると膨大な質量を誇る焦熱の大火球ではあるが、ボストレントに近付くにつれて普通の火球のように見えてしまう。やはり縮尺がおかしい。

 2体目も1体目と同様に悶え苦しんだのち普通の黒い樹に戻った。


 同様に3体目も処理すると、こちらはダンジョンから離れた時間が短かったのか黒いモヤとなって霧散する。僅かな差だったはずだが何か明確な基準があるのだろう。


 ――これで都市南方の初動に成功しただろうか。

 継続して大量の魔獣が押し寄せて来ているし大型ダンジョンも健在だが、ひとまずは小康状態まで持って行けたはずだ。





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