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バサリという不吉な音に発生源を見遣ると、大型ダンジョンから追加の黒ボストレントが這い出て来ようとしているところであった。
――畳み掛けるつもりなのだろう。まだ討伐方法を探り始めてもいない段階だというのに、やってくれる⋯⋯。
まずは黒トレントの動きに注意しながら左右から迫る魔獣の群れから先に対処しよう。あれらを都市内に入れるわけにはいかない。
先に根を張った方の黒トレントは、家ほどの太さがある枝を次々と振り上げ地面に叩き付け始めた。高速飛行で回避行動を取りつつ位相差障壁を展開、防御可能かどうかを確認する。
――ダメージを受けるかどうかはともかく、衝撃により攻撃の機会を逸するのは歓迎できないのだ。
展開した位相差障壁は期待通り黒トレントの振り下ろしを受け止めた。空間が軋むほどの轟音ではあるが、いかに太い枝でも易々と突破できないようだ。
やはり――本体への空間干渉は無効化されるが黒トレント自体に空間干渉能力があるわけではないな。
――ならば何とかできそうだ。
私は引き続き上からの打ち下ろしを障壁で防ぎつつ、手加減無しの雷撃を左右に放った。並行して空中に大量の雷球を高速生成していく。
私を中心核とした雷光の網が、轟音と共に広場を埋め尽くす。
続いて全方位に射出された雷球が森の中で巨大な光の半球を次々と展開した。
――断末魔の大合唱を浴びながら次の攻撃を準備。
苛烈すぎるはずの攻撃をものともせず周囲を埋め尽くしていく魔獣の群れへ向けて再度雷撃の嵐を叩き込む。
2体目の黒トレントは1体目と離れた場所に根を張り終えたようだ。同じく枝を振り上げて周囲への無差別攻撃を開始した。――巨大な枝らが地面に打ち付けられる度に魔獣の群れが一部壊滅し、そしてすぐにその場所が魔獣で埋め尽くされていく――。
私が防いでいるからいいものの、しっかり広場に攻撃が届く位置に根を張る辺りいやらしい。
――そもそもが城ほどに巨大なので攻撃範囲が広い。このまま放置すれば都市の人々は外界との接触手段を失ってしまいかねないだろう。あれらは何としても倒さねばならない。
恐らく多数の子ダンジョンから同時に溢れたのであろう雑多な魔獣たちは、凄まじい大群となってここに押し寄せて来ている。この勢いを受け止めていたとは帝王もなかなかやるものだ。私も大規模な広範囲攻撃を連発することで対応しているが現状維持が精一杯である。
そうこうしている内に大型ダンジョンから3体目の黒ボストレントの先端がぬうっと突き出されるのが視界の隅に見えた。
このままボストレントの大森林でも作るつもりなのだろうか、正直そういうのはやめて欲しいものだ。
――もはや森林環境への気遣いをしている場合ではないな。
私が保全したとて、このままではトレントが破壊する速度の方が早いであろう。
私は意識を切り替え火属性魔術の使用を解禁する。
両手からの雷撃はそのままに展開する雷球を火球に変更、そして速射を開始。
連射速度を上昇させていきどんどんと気温を上げていく。
瞬く間に着弾点に残留する火炎が枯れた樹木へ燃え移り、広場外側の枯死した樹海を火の海へと変えていった。火種を追加して炎の壁を作り魔獣の流入速度を抑える作戦である。
ダンジョンから出たばかりだった魔獣は火に巻かれ消滅、時間の経っていた個体は消滅せずに新たな火種となりつつ倒れていく。
――まずは魔獣の群れの対処を。それからボストレントの撃破を狙おう。




