7-1
再度探知波を放ち、都市内部に侵入した魔獣が全滅していることを確認する。
――この門が新造されてから数分の時間が経っているようであったが、幸いたまたますぐ近くに居た魔獣はそこまで数が多くなかったらしい。入り込んだ個体は全て処理できたようだ。
問題は門の外である。
元々の北門が開いていた時は、どうやら門の外で帝王と光帝が奮闘してくれていた模様。
しかし今は門の外で食い止めてくれている者は居ない状態になってしまっている。
私は高速飛行の魔術を駆り門の外へと急いだ。
――都市の南側は少し広場のようになっていた。
南から伸びてきた街道が都市にぶつかり左右に分かれるポイントに元々なっていたらしい。門のところから見ると正三角形に見える広場だ。
しかし南から伸びるその街道は現在通行止めである。
街道に進んで少し行った場所に、道を塞ぐ形で新たなダンジョンが出現しているのだ。
見た目がいつもの入口岩なのですぐに分かったのだが、どうにも縮尺がおかしい。
もちろん広場を挟んで更に向こうなので正確な大きさは分からない。しかしその全体像は砦と見紛うほどに巨大で、出入口も遥かに見上げるほど大きく口を開けている。明らかに異常だ。
まるで、ボス級専用ダンジョンであるかの様な――。
そんな嫌な想像が脳裏を過った次の瞬間、新ダンジョンの出入口からバサリと茂みが突き出された。
いや、違うな⋯⋯。樹木の先端部が出てきた。
それは広い開口部から這い出るように全身を引きずり出し、その巨体を露わにする。
――ボストレント――正式名称は知らないが、トレントダンジョンの最深部に居たボスが当たり前のように出てきた。しかも全身が黒いので恐らく亜種である。まさかボストレントの大黒檀版ではあるまいな⋯⋯。
巨大な黒トレントはダンジョンの出入口から苦心しながらウゾウゾと個別に蠢く根の部分を取り出すと、広場の方まで少し前進する。
そしてあまり広くない広場に入り込むと根で土を掻き分けその場に沈んでいった。
更には淡く光り始め、周囲から水分や魔力を奪っているのか広範囲の植物を次々と枯らしていく。
上手く使えば開墾などに有用そうではあるが、現状では迷惑でしかない。
さっさと倒してしまおう。
――左手を振り、示した範囲の空間を断裂させる。
しかし干渉したはずの空間には何も起こらず、黒トレントは大きく枝をしならせ始めている。
――む? 上手くいかない⋯⋯? まさか防がれたか。
再度試すも、空間断裂攻撃に対する不干渉能力を備えているようで効果が見られない。
そうか⋯⋯オーガの王を倒す際に使用したせいで空間干渉系を対策されたと見るべきだろう。私が攻め手だったとしてもきっとそうする。
では別の攻撃を、と思ったその時。
都市の周囲を巡る回廊のようになっている東西の道から多数の魔獣が走り込んできた。北の門を目指していた魔獣たちがこちらに方向転換してきたようだ。
――のんびり黒トレントの対処法を探す暇は与えてもらえないらしい。
いいだろう。ちょうど腹に据えかねていたところだ。
私の八つ当たりに付き合ってもらうぞ。




