6-10
上空で魔術を高速飛行に切り替え南に急行する。
探知で簡単に分かればいいのだが、さすがに都市を名乗るだけあってリステリアの王都ほどではないもののかなり広い。私の探知可能範囲ではここから外壁まで届かないのだ。
門周辺以外が危険となるとアンナ達が心配だ。まずは南端に急ごう。
滞在させてもらっている孤児院の無事を確認してから、その東西の探知を開始するような動き方をしようと思う。
私の探知で城壁の2割くらいはカバーできるはずなので、東西合わせて4割ほどだろうか。冒険者たちも調査を開始しているのでそれで何とか間に合うかも知れない。
東回りと西回り、どちらを優先すべきか考えながら飛行を続けていると、都市の南端が見えてきた。
大通り沿いの上空を飛んで来たので間違いない――はずだ⋯⋯。
――腹の底が急激に冷えていくような感覚がする。
――無い。
南端の壁に沿うように建っていた孤児院が無い。
その代わり、大通りの先には大きく口を開けた立派な門が城壁に出現しておりゆっくりと魔獣の影が都市に侵入しようとしているのが見える。
なん⋯⋯そんな、馬鹿な⋯⋯!
ダンジョン内の設備の変更は、内部が無人の状態でないと行われないのではないのか⋯⋯!
この都市は無人どころか万単位の人が居るのだぞ。
アンナは、生まれたばかりの赤ん坊は、院長や子どもたちは――理不尽に消え去ったというのか!
ありえん⋯⋯。
有ってはならない、そんなことは⋯⋯!
私は即座に最大出力の探知波を放つ。
同時に巨大な光球を作成し上空に打ち上げた。探索を続けているであろう冒険者たちへの合図である。
続いて氷の槍を大量に作成、探知に掛かった魔獣たちに向けて自動追尾を開始する。
くっ⋯⋯アンナたちに該当しそうな者が探知に掛からない。
彼女たちは迷子札を持っているだろうか、そちらはどうだ?
存在――しない?
いや――存在はしている。しているな、間違いない。
だが、妙な場所に居るようだ。
都市でも、森でも、ダンジョン内でもない。
封印?
いや、違うな。
封印程度ならば私の体の一部である迷子札の位置を見失うなどありえない。
別空間、別次元、別世界、そのどれでもない。
私の体の一部を本体の干渉から完全に遮断してしまうほどの遮蔽力を持った意味の分からない場所に取り込まれてしまっている。
しかし消滅していないことだけは分かった。
感覚的な話なので説明は難しいが消滅はしていない。
――ならば、生きているはずだ。
どういうわけかアリシアやメリル、フロッサたちも同様の状況に居るらしい。きっと街の異変に対し防備を固めようとしたのかも知れないな⋯⋯。
だが彼女たちが一緒ならば食料の心配も要らないだろう。私の感情ほどには事態は切迫していないはずだ。落ち着け――落ち着け――。
――よし。まずは新しい門の防衛からだ。
そして冒険者たちが集まってきたら引き継いで皆の捜索を開始する。
⋯⋯私の庇護下にある者たちを隠すとはいい度胸だ。
必ず、取り戻す。




