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「済まんが――都市の状況を教えてくれないだろうか。中央ダンジョンに潜っていたので外の現状が気になる」
トマス氏は不思議そうな顔をした。
「精力的だな? 大仕事から帰ったばかりだろうに⋯⋯。まぁ実力者が動いてくれるのは正直ありがたい。もちろん教えるとも」
そう言うと紙を1枚持って来て長机の上に置いた。地図だな。
「中央ダンジョンの方は必要ないな? では門の方だけ。都市の外の子ダンジョンからも大量発生による魔獣の氾濫が発生している。結果的に中央ダンジョンと同じタイミングだったわけだな。恐らく連動か呼応か⋯⋯意図的なものを疑っている状況だ」
「様子見をしていると聞いたが――押し寄せて来ていないのか?」
「そこまでは聞いているのか。放った物見によると、謎の人物が押し留めているそうだ」
「謎の人物⋯⋯?」
「ああ、仮面を付けた金髪の男女らしい。加勢できないほど派手に暴れているようでな、危ないので様子見している状況だそうだ」
おっと⋯⋯ここで出てきたか。
まず間違いなく帝王と光帝だろう。
光帝の魔力増強のために子ダンジョンをこっそり攻略していたら、大量発生に巻き込まれたので仕方なく戦っている、といったところだろうか。
都市の住民を見捨てて離脱できるような性格ではないだろうからな。
それにしても仮面か⋯⋯いつものフード付き外套だと正体が分かりやす過ぎるが故の苦肉の策なのだろうが⋯⋯果たして意味があるのか謎である。そんな無茶ができる人物はこの世にそうそう居ない。
あとは任せて大丈夫かどうかだが――確か彼らの手元には魔王城の時に遣った完全回復薬が余っていたはずだ。しばらく大丈夫だろう。
「ふむ⋯⋯。ではあまり事態は切迫していないのだな」
「謎の人物たちが信用できるなら、だがな。切迫はしていないが非常に危うい状況とも言える」
「なるほど。では私もその謎の人物たちに加勢を――」
そう言いかけた時だった。
緊急連絡! と連呼しながら必死の形相で人混みを掻き分け冒険者が駆け込んできた。その強引な動作から見ても只事ではない。
「どうした!」
「ギルマス! 大変だ! 都市の門が勝手に閉じた!」
どういう意味だろう?
聞いた限りでは守備態勢が向上したようにしか思えないが⋯⋯。
「なんだと!? 代わりに開くのはどこだ!」
「今大急ぎで手分けして外周を調べてる!」
なるほど。ダンジョンの入口は『常に1つ』というわけか。
2つになることは無いし、逆に0になることも無い。
唯一の入口である門が閉じたならば、外壁のどこかが代わりに開くに決まっている。
そしてその開いた先に居るのは大量の――。
「こんな時に⋯⋯! いや、こんな時だからか⋯⋯! ――伝令! 門に向かわせた冒険者たちを引き戻せ! 南半分の探索に向かわせろ!」
真っ青な顔をしたギルド職員が1名、了解と叫んで駆け出した。
私も一応トマス氏に声掛けしてから出るとしよう。
「では私も南半分の調査に回る。また後で」
「待て。これを持っていけ」
振り返りかけた私をトマス氏が呼び止めた。
上着の内ポケットから手紙のようなものを取り出している。
「約束の報酬だ。作成方法を書いておいた」
おや、準備がいいな。
――つまり『口頭で伝えられなくなる事態』も想定していたわけか。
ギルドマスターという役職も大変だな。
感謝を述べてありがたく報酬を受け取ると、ここに入ってきた時と同様に端の方から空中へと飛び出した。




