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「夕方までさ、露店市を見に行っていい?」
見つけた食堂付きの宿屋で昼食の肉を固そうにナイフで切りながらフロッサが言う。あれは1階層で出る獣型魔獣の肉らしい。……いや、1階層はここだったな。2階層と呼ぶべきエリアの話である。ややこしい。
この宿は旅行者や冒険者が泊まるには少しお高めの宿だが、ロビーに本を置いてある宿が周辺ではここしか無かったのだ。食堂が付いていて助かった。
「構わんが、夕方から何かあったか?」
取ってきた本から目を上げて思案する。
確か通りの先の広場でダンジョンから取得してきたであろう物品を広げている連中がたくさん居たな。彼女が言っている露店市とはそれのことだろう。
「ほら、今日で3日目だから一度帰らないと」
……そうだった。新天地に気を取られて早速忘れるところであった。危ない危ない。
「……そうだな。顔を見せるのは明るい内がいいだろう。――何か目当ての物があるのか?」
「せっかくだからお土産を買いたいのと、掘り出し物探しかな。鑑定スキルの定番といえば、ガラクタからのお宝発見と相場が決まってるし」
いやそんな定番は読んだことがないが。
まぁ、きっと彼女の前世にはそんな常識があったのであろう……。
だが確かに露店市のガラクタで学園長からの依頼がいきなり解決する可能性も無くはない。期待せず試してみるくらいの価値はあるか?
――昼食が終わったので露店市に向かう。
本の続きは夜の楽しみに取っておこうか。
露店市は大通りの交差点にある広場の隅を全周使って展開されている。
広場の真ん中を埋めてしまうと交通の妨げになるので禁止でもされているのだろう。行儀良く円を描いて露店が並んでいる形である。
見ると買う者だけではなく露店に売りつけている者も居るようだ。やり取りと駆け引きがあちらこちらで行われていて目に楽しい場所である。
「うーん……ガラクタばっかりだなぁ……」
フロッサは片っ端から鑑定している様子。魔眼というだけあって遠くからでも鑑定できるようだ。知らなかったがそれは結構凄いことではなかろうか。
並んでいるものを私も眺めてみたが、錆びた剣や欠けた剣を置く店、魔獣素材を雑に紐で組んだ防具を売る店、濁った色合いの回復薬を売る店など、鑑定するまでもなくハズレである。
これは早々にお土産選びへ移行した方がいいかも知れないな……。
「おお? 掘り出しもの……?」
私が都市の名産品は何があるかと見回している内に真面目に鑑定していたフロッサが何か見つけたようである。
「いいものがあったか?」
「微妙。『身体能力+1の指輪』だってさ。1でどのくらい強くなれるんだろ」
「あそこにあるということは、試着しても体感できないくらいであろうな……。だが私も効果が気になるので後学の為に買っておこうか」
店主の横の立て札によると全品が大銅貨1枚らしいのでフロッサに大銅貨を渡して買ってきてもらう。
私まで行くときっと不自然であろう。
さてさて――私は今日の手土産でも探しておこう。
とはいえ甘味の類いは無さそうである。確かに観光に来るような場所ではないのでそちら方面の発展はしていないと見るべきか。
……仕方ない。
適当に肉や野菜などご当地食材でも買おうか。
家の者は3人とも料理できるのでそれで問題ないだろう。




