1-5
道に戻り再びマットレスを取り出して飛び続けること数時間――。
フロッサが無意識に昼食を何にするかの話題しか話さなくなってきた辺りで、木々の陰からちらちらと高い城門が見え始めた。
「見えたぞ。恐らくあれが中央の都市だ」
「大体100kmくらい飛んできたんじゃないかな。とんでもなく大きい森だったね……」
「何を言う。明日からも点在するダンジョンを探してこの森と付き合い続けるのだぞ」
「……そうだったね」
距離の単位はよく分からなかったが自分で飛んできたので『すごく遠い』というニュアンスで言っているのは分かった。
探知を放つと道の終わり――門があるであろう辺りが広場になっているようだったので、広場に出る直前でマットレスを降りて片付け徒歩で向かう。
森から来る魔獣を迎撃する場所でもあるのか、あちこちに土塁やら櫓やらが設置してあり真っ直ぐ門に向かえないようになっているようだ。
「――これで手続きは完了です。以降はこの木札を見せれば手続きを簡略化できます。顔パスはありませんので失くさないようにしてくださいね。では改めまして――都市国家デュラムへようこそ!」
門での手続きは、入国審査にしては簡素だなと感じる程度のものだった。毎度書類を書くのは大変なので簡略化してもらえるのは助かる。周囲のダンジョンへ行くために何度も通るだろうからな……。
都市自体がダンジョンの1階層目というのは本当の話らしく、門の内側に入った瞬間頭の中に謎の声が聞こえたのかフロッサが硬直していた。
入国時によくある出来事なのか、入国管理の人が硬直が解けるまで当たり前の顔で待っているのが地域の特徴のようで面白い。
「ああー……びっくりしたぁ……。話には聞いてたけどリアルでああいう事されるとビビるわ……」
「一体誰の声なのだろうな……。入国手続きは終わらせておいたぞ。――自分の木札は持っておいた方がいい」
私の疑問に返す答えを持ち合わせているわけもなく、フロッサは肩をすくめて礼を言いつつ木札を受け取った。
「ありがと。まずはどこに行く? ギルド?」
「空腹だと言っていなかったか? まずは食堂付きの宿を探そう。ついでに街の雰囲気を探りながら次の予定を立てる」
「了解。たぶん通りの雰囲気的にこっちかな」
フロッサの勘を信じて歩き始める。
――とはいえ都市の中央を貫く大通りの話ではある。
「そういえばダンジョンシステムはちゃんと適用されたのか?」
「もちろん大丈夫だよ。……っていうか適用されないなんておかしな事になるのポンさんくらいじゃないかな?」
うぬぅ……まぁ、それもそうか。
普通の人間が別で本体を持っているわけがない。
そんな事例は確かに不本意ながら私くらいであろう。
2人で宿を探して見回しながら通りを歩く。
周囲が森なので木造が多いと想像していたのだが、意外と石や金属やレンガなどしっかりした材質の建物ばかりである。
ああ、そういえばここはダンジョンの1階層であったか。下手をすれば建築が全くできず、既存の構造物を流用する事しかできなくても不思議ではない。
確かダンジョン内に放置された物はダンジョンが吸収してしまうという話だったが、その辺りも生活に影響しないのだろうか。想像するだに不便である。
この都市内の特別なルールが色々とありそうだな。
失敗する前に情報を集めておかねば。




