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「よし、ここは逆転の発想でいこう!」
フロッサが勢いよく立ち上がった。妙案が浮かんだらしい。
そして座る。なぜ立ち上がった。
「逆転の発想?」
「うん。帰宅するのが難しいならお母さんたちの方に来てもらおう。――院長先生、ここって空いてる部屋あります?」
「ええ。部屋だけはたくさんありますよ」
「ふんふん……じゃあポンさんに頼んで家財道具ごと連れて来れたら問題ないわけか……」
「名案だとは思うが、そう上手く聞き入れてもらえるか? 特にアンナは出産してまだ少ししか経っていないのだぞ」
「もう30日くらい経ってるよポンさん。回復薬も使ってるからほぼ全快してる。多分話したら協力してくれるよ」
「ううむ……では今夜にでも話してみるか……」
正直に言うと、いつ危険地帯になるか分からないこの都市に皆を連れて来る事に抵抗を感じる。
だが、それで原因究明が遅れれば今度はこの都市に住まう者たちが危機的状況に陥ってしまうだろう。
要は神託によって齎された災害の情報の原因を、皆に被害が発生する前に私が排除できればいいわけだが……。
全く、肝心な部分が丸投げではないか。
これだから神という存在は……。
――夕方の少し前まで子どもたちを連れてボス周回に興じ、自宅へと戻る。
態勢の整備に成功すれば頼まれた探索を実行すると院長に約束してきたので皆に協力を要請しなければならない。
要点になると思われるのは静かな環境を用意できるかどうかではないかと思っているのだが、そこは他より少し離れた部屋を用意してもらえるそうなので何とかなりそうではある。
良い返事を期待しつつ夕食時に事情を話してみた。
「私とアリシアはどちらでも構いません。ポン様の意向に合わせます」
「そもそもアタシたちは奴隷ニャ。気を使わなくていいニャ」
メリルとアリシアは問題ないようだ。
彼女らであればそう言う気がしていた。問題はアンナの方である。
「そうですね……色々と気を使っていただいて申し訳ないくらいです。フロッサを独りにしないようにするために必要なことなのでしょう? でしたらもちろん賛成です。環境が変わるのは確かに少し不安ですが……皆さんが一緒なのでしたらきっと問題ありません」
――子育てが1番大変な時に、なんと殊勝な言葉か。
人間というものは本当に強い生き物なのだな……。
私が感動しているとメリルが追加提案してくれる。
「それに、いよいよ危なくなった際は皆でこちらに避難してしまえばよいのでは?」
「そうだな……最終手段ではあるが良い考えだ。その際はフロッサの鍛錬どころではなくなっているだろうからな……都市に残る理由も無かろう」
「その時は他のみんなもこっちに連れてきていいですか?」
フロッサが不安そうな声色で問う。
せっかく仲良くなった友人たちが都市と共に消え去るのは許容できないのだろう。
「もちろんだ。――だが受け入れる場所があるかどうかは別問題だな……。住む場所を探す必要が出てくるであろう。その際は協力してくれ」
「はい! 任せて下さい!」
おお、頼もしいな。本当に活躍しそうだから困る。
「まぁ、そうならないよう私が頑張るのだがな……。よほど災害の規模が大きくない限りは未然に処理できるとは思うが、こればかりは調査してみなければ分からない。どう転んでもいいように心の準備だけはしておいてくれ」
『はい』
「了解です」
喜ばしいことに上手く皆の協力が得られた。
ではさっそく明日にでも引っ越しをして、本格的に調査開始といこう。




