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「――本日お呼び立てしたのは、ご相談したいことがあったからです」
リステリアから来たことや都市に来た目的など、雑談混じりで一通り共有したあと、院長は表情を引き締めそう切り出した。どうやら困りごとがあるらしい。
「あの子たちからの話を聞く限り、ポンさんは凄腕の冒険者であるとお見受けしました。そういう方にしか頼めない類いの話なのです」
「ふむ? 内容にもよるな……。まずは話を聞こう」
院長は少し躊躇う素振りを見せたあと口を開いた。前振りの割にどうも荒事ではなさそうな雰囲気である。
「――夢を、見たのです」
「夢を?」
「はい。都市の内外を問わず大量の魔獣が溢れ、人々が逃げ惑い、そして敢えなく消えていく夢です」
それは嫌な夢だな。
だが所詮は夢である。真実味となると話が別だ。
「何か信憑性を感じるような要素があったのか?」
「――その夢を見たのが、ここで働く大人全員だったのです。そして夢の最後には神々しい女性が何かを伝えようとしているようでした。残念ながら言葉が分からず内容までは分からないのですが……」
ううむ……。神性存在からの警告か――。
信仰心によるエネルギーを流用し逆流させることで、聖職者限定で神託を発布した可能性が高い。
省力的な手法ではあるが、とにかく警告範囲を広げたいなら有効である。
「恐らく神託の一種だな。宗派の聖職者全員を対象にしたものだろう。失礼だが信仰している神は?」
「創世神エルフェリア様です」
「ほう……誠実な性格の神が居たものだ……」
「ポンさん詳しすぎない……?」
「ああ、以前似たような事案に遭遇したことがあってな。――本格的な神託となると神も負担が大きいようだが、夢で漠然としたイメージを送るくらいなら現実的な消費で行なえるらしい。今回はそれだろう」
「非現実的な話の現実的なラインはそこなんだ?」
「そ、それではあのお姿は――」
「このタイプの神託は信仰による繋がりを利用して行われるものだ。間違いなく創世神エルフェリアのものだろう」
「なんと……! ああ、もっと絵の練習をしておくべきでした……」
どうやらあまり画力に自信がないらしい。
私もあまり他人の事を言えないのでここは突っ込まない。
「それで、頼みたいこととは?」
「――はっ! 失礼しました……。お願いしたいのは原因の調査と、可能なら排除までです。先ほどのお話の中でギルドから中央ダンジョン調査の依頼を受けているとのことでしたが、その範囲を広げていただきたいのです」
ふむ。トマス氏は20~30階層までと言っていたが、それ以上に探って欲しいというわけだな。
「なるほど。災害の発生に信憑性がある以上、原因の存在に確信を持っているわけか……。それを見つけるまで探索を続行して欲しい、と――」
「はい。充分な謝礼をお渡しできそうにない状況でお願いするのも心苦しいのですが……」
「せっかくできたフロッサの友人たちの命が懸かっているからな。引き受けるのもやぶさかではない――」
「本当ですか!?」
「――だが問題もある」
「問題、ですか……」
院長は息を呑んだ。きっと経済事情が頭を巡っているに違いない。
私は隣に座るフロッサの方を見た。
「この子のことを親が心配していてな。3日に1度、とある方法で帰宅して顔を見せる約束になっているのだ」
「それ優先度高いんだ?」
「約束は約束だからな。それに夜間に独りというのも本当はあまり良くない。できれば日帰りしつつ少しずつ調査を進めようと思っていた」
「まぁ、ポンさん本気出したら凄く早く移動できるもんね……」
「深い階層を隈無く調査するとなると、恐らく日帰りでは厳しくなってしまうであろう。その対策が必要だ」
「対策かぁ……」
フロッサが腕を組んで考え始めた。
私が頑張るだけでは恐らく時間的な限界があるだろう。
何か妙案が浮かばないだろうか。




