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ダンジョン都市国家デュラムの1階層。――入口から最も離れた奥の壁際に建っている大きな施設。それがここデュラムの孤児院であった。
大きさとしては王都にあるフェリシアの実家くらいの規模なのでかなり立派である。ダンジョン内設備だけあり築年数は古そうだが一部が崩れていたりはしない様子。意外と住み心地は良いのかも知れない。
ただ、フェリシアの実家とは違い住んでいる人数が恐らく多い。大きな猪肉を毎日10個消費できるくらいの人数である。広い屋敷で優雅な生活とはいかないことだろう……。
「あそこです! おーい!」
見ると先触れに走ったアルとレンが門のところで跳ねながら手を振っている。
……楽しそうだな。
別に毎日会っている者同士なのだから新鮮味もないはずなのだが。
解放されている門の奥に目線を遣ると、数名の聖職者が立っているのが見えた。1名だけ他より前に出ているので彼女が院長先生なのだろう。
見た感じでは30歳手前ぐらいであろうか、想定よりかなり若い。
門のところまで到着するとジールが私達を紹介してくれた。紹介というより宣言に近いが特に問題ないだろう。
「院長先生! フロッサとポンさん連れてきたぜ!」
「初めまして。冒険者をやっているポンだ」
「はじめまして! フロッサです!」
真っ直ぐ見透かすような眼差しで見つめてくる院長に向かって自己紹介をし軽く頭を下げる。フロッサは元気よく行く方針のようだな。
院長はフロッサの様子に少し目を細め、私の方に視線を戻すと口を開いた。
「――急にお呼び立てして申し訳ありません。院長のアルテアです」
「こちらこそ挨拶が遅れて申し訳ない。色々勝手をしてすまなかった」
「いえ、それに関してはとても有り難く思っております。――立ち話もなんですので中にご案内します。こちらへどうぞ」
やはり顔合わせだけでは終わらないか……。
下の子たちの世話をするよう言い付けられつつ追い散らされる子どもたちを眺めながら思案する。
さて、何をどこまで話した方がいいだろうか。
私が魔物であることは言わない方が良さそうだな……。
他の職員は仕事に戻り、院長だけが案内に残った。フロッサと2人連れられたのは『院長室』と札の掛けられている個室である。
扉を開けると札が扉とぶつかりカランカランと乾いた音を響かせたのでドアベルの役目も果たしているようだ。意図しているかはともかく。
「どうぞ、あちらに座られてください。今お茶をお淹れします」
勧められたソファに座って待つ。フロッサは防具の腰の部分を外して拡張鞄に投入してから座っていた。こういう時不便だな……。
正直お茶は要らないのだが、断るのも変なので大人しくしておく。
「それでは改めまして。この孤児院『麦の家』の院長をやっておりますアルテアと申します」
「丁寧にありがとう。私はポン――ランク7の冒険者だ」
最近覚えた小技を駆使し、胸元から取り出す振りをして空間収納からギルドカードを取り出して渡す。
院長は銀色のカードを受け取りしげしげと眺めた。
おや、裏まで見るのだな……?
院長はギルドカードを私に返すと居住まいを正した。何か話があるようである。
「まずはお礼を言わせて下さい。毎日ボロボロになって帰ってきていたあの子たちを掬い上げていただいて――本当にありがとうございます」
院長は深々と頭を下げた。
感謝を受け取り、頭を上げてもらう。
「本当は狩りに行かせるのも心苦しく思っていたのですが、止めさせるほどの余裕もまた無く悩んでおりました……。それが、あんなに笑顔で誇らしく帰ってくるようになって……何と感謝を述べれば良いか分かりません……」
院長の目尻に光るものが見える。
困ったな。これはこれで苦手分野である。




