4-9
「決まりました! 『剛力』スキルと交換お願いします!」
また代表してジールが言わされている。今回は交渉とも言えないような場だが、きっと場数を踏むための練習なのだろう。将来の役に立つといいな?
「もちろんだ。腕力が3倍になる代物だが――誰が使うかまで決まっているか?」
「はい! ノイに使ってもらいます!」
ふむ――彼らの戦い方からしてノイが全体の要である。最適な判断といえるだろう。
片膝をついて『剛力』のスキルオーブを手渡してやると、ノイは少し躊躇ったあと意を決して使用する。
「――あっ。『剛力』だって……」
『剛力』スキルは常に3倍になるスキルなので「使えるようになった」という感覚ではないのだろう。不思議そうな物言いであった。
私は残りのスキルオーブを空間収納に落として格納すると立ち上がった。
「ではさっそく試してみようか。一旦先ほどの広場に戻るぞ」
頷く子どもたちを引き連れボス部屋前の広場に戻る。通過のため順番待ちしていたパーティーに先を譲り、ついでにランプの点灯法則について教えておく。
ランプが青くなったので入って再戦すると、スキルの恩恵が如実に現れた。
前回と同じくノイの盾を構えた体当たりからの組み立てだったのだが、まるで大柄の男性が全力で突進したかのような衝撃だったのである。
具体的にはスケルトンの足が浮き、半回転しながら石畳に頭から落ちるという珍しい姿が見られた。
「力加減気を付けないと……」
本人は困った顔をしていた。孤児院で下の子の面倒を見る時に加減を間違えると大変なことになると思ったようだ。確かフロッサも似たようなことを言っていたな……。
では今日は力加減を覚えるまで繰り返し戦おう、ということで本格的にボス周回が始まった。
――スケルトンと戦うこと50回。
さすがに中級冒険者のマーガレットほど効率的には戦えず、昼食を挟んで計50回ほどでそろそろ帰った方がいいかという時間になってきた。
恐らく身体能力強化としては6人で効果が分配されてしまうので今ひとつであろうが、スキル獲得まで計算に入れるとかなり順調といえるのではなかろうか。
獲得できたのは黒い骨が18本、白い骨が31本である。
昨日の鍛冶屋を紹介しようかとも思ったが、今のところは不自由を感じないので全部売却するそうだ。大きくなるまでそれがずっと続きそうな予感がする。
そのあと帰りの3階層にタウロスが歩いていたので子どもたちに倒してもらったのだが、珍しいことに肉が出ず魔力石が転がった。
マーガレット含め、このダンジョンの魔獣を私以外が倒したのは3体目である。ボスとは違い確定で何かを落とすわけではなさそうな気配だ。必ず肉が出る肉ダンジョンは実は例外だったらしい。勘違いしていたな……。
確かに魔力石が出ず必ず何かが貰えるなら、逆に魔力石の方が珍しい存在になってしまうだろう。需要を考えるに本来はもっと魔力石ばかりが出てしまうと思っておいた方が良さそうだ。
――1階層の都市に戻ってくると、良い感じに昼下がりの時間帯であった。
これなら換金して解散で良さそうだ。
ホッとして気を抜く子どもたちを促して冒険者ギルドへと向かった。




