4-6
宿を覗いてみるとフロッサも戻っていた。
帰るついでに皆に宿まで送ってもらったようだ。
暗くなる前に帰って来て偉いなと思ったら、他の子たちは夕飯の準備に間に合うよう帰るのが鉄則なのだそうな。食材調達係ならそれもそうか……。
私の方も新情報としてボス周回なる訓練方法があることを伝える。
それを聞いたフロッサは驚きと喜びなのか気持ち悪い表情をした。
「ぼぼぼボス周回!? そんなのあるのココ!? うお……めっちゃやりたい!」
殊の外乗り気である。さすがはフロッサ、期待通りの反応だ。
「連れて行くのは構わんが、6人だと効率が下がるかも知れんぞ?」
「猪追いかけてるよりは効率高いんじゃないかな。今の実力なら妥当だと思う」
「ふむ、ボスが強すぎても危ないしな……」
欲張って下の階層のボスを狙うよりも、ボス周回をする前提なら5階層に行った方が身の丈に合っているかも知れない。
「お肉狩りとの兼ね合いもあるだろうし、とりあえず明日みんなと相談してみないとだね。広い道を通ってるみたいだから中央広場で待ってたら会えると思う」
その辺りは保護者から厳しく言われているのだろう。都市の治安は悪くないが、それは大通りに限った話である。
「肉の方は私の在庫を渡してもいいぞ」
「あれ? 売却してないんだ?」
「お前たちが売る時に値崩れしていたら困るであろう? 念のため時間を止めて保管してある」
「この都市人口がけっこう多いみたいだし大丈夫じゃないかなぁ――でもありがとう。選択肢に入れとくね」
私は頷き、報告会兼打ち合わせを終えた。まだ都市に来たばかりなので色々と試してみた方がいいだろう。
――翌朝。中央広場で待っていると想定通りカラフルな5人組が現れたので手を振って呼び止め、昨日計画したボス周回案について話してみた。
その場でフロッサを加えて会議が開催された結果、強くなって損することはないのでとりあえず行ってみて厳しそうなら肉ダンジョンに戻ろう、という結論に至ったようである。
「先に注意事項を。出現するタウロスやボスのスケルトンは武器を持った魔獣だ。攻撃に当たってしまいそうな時は、腕でも足でも犠牲にしてとにかく死なないように。死にさえしなければ完全に治してやれるからな」
神妙な顔つきで頷く子どもたちを確認し、さっそくすぐそこにある2階層への階段に向かった。
階段を降りてギルドのデスクに向かい、子どもたちを引率してダンジョンに入る旨を口頭で申告しておく。
外の森と同じく引率者が居れば問題ないのだが、悪用を防ぐため人数の申告が努力義務化されているのだ。
「5階層のボス部屋までは最短経路を進む。将来的に有用な情報だと思うので各自道順を覚えておくように」
『はーい!』
初めて入ったのであろう中央ダンジョンが物珍しいのかヒソヒソと感想を言い合う声を背後に聞きながら順路を進む。緊張感が足りないな……。
順路は魔獣の密度が低いこともあり全く遭遇しなかったのだが、3階層の半ば辺りで角の向こうにタウロスを発見する。せっかくなので肉を狙おうか。
細めの氷の槍を4本作成、高速で射出する。
氷の槍はタウロスの両肩と両腿に刺さりタウロスを床に転がした。不意の攻撃で自由を奪われたタウロスは怒りからか咆哮を上げる。
「タウロスからは肉が取れるぞ。誰か止めを頼む」
振り返ると咆哮に驚いたのか全員がノイの後ろに青い顔で固まっており、厳正なる押し付け合いの結果――槍を持ったレンが遠くから止めを刺していた。
ふむ、大柄な人型魔獣はやはり怖いか……。
――まぁ、怖いというのも良い経験だ。
特に正しく怖がる必要があるのが冒険者なのだから。




