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私が向けた視線に軽く頷きフロッサは続ける。
「――ここだけの話、ポンさんは帝ランクと肩を並べるほどに強いです。報酬もそれなりに用意して頂かないと受けられません」
トマス氏は少し驚いたように目を見開いた。
比較的まともな交渉の文句が少女の口から出てきたら驚くのも無理はない。
「これはこれは……しっかりした嬢ちゃんだな」
しかしトマス氏はにっこりと表情を崩す。
「心配しなくても取っておきの報酬を考えている。――ダンジョンの作り方を調べているそうじゃないか」
む? これはまさか、知っているのか。
疑いの視線を送るも涼しげに受け流されてしまった。むう……手強い。
「報酬として人工的にダンジョンを作る方法を教えてやろう。――親切で言っておくが、闇雲に試しても到底辿り着けない方法だ。報酬として不満があるかね?」
あくまで『方法』が分かるだけで、それを聞いたところですぐに作成が可能になるわけではなさそうな点に注意が必要だ。
だが、教えてもらえたら調査が大きく前進することは間違いない。迷いどころである。
「いいえ、その依頼お受けします。調査して欲しい事とは何ですか?」
――おお、迷わず受けたな。少し驚いた。
トマス氏もやや面食らった表情をしている。
「あ……ああ、依頼したい内容は中央ダンジョン内に居る魔獣の生息数の調査だ。――知っているとは思うが、この都市はダンジョンの上に栄えている。間違ってもダンジョンから魔獣が大量に溢れ出てくるような事があってはならんのだ。そのため定期的に調査を行なっているわけだな」
思ったよりまともで普通の依頼であった。
「現地の冒険者には頼まないのか?」
「もちろん依頼はしている。だが人気が無くてな。低ランク帯の冒険者では浅い階層までしか調査できず不十分、高ランク帯の冒険者だと隊商の護衛の方が儲かるというわけだ」
なるほど。深い階層まで調査する動機に欠けるらしい。私などであれば面白半分で、ある程度深い階層まで探索してくれるだろうと期待しているわけか。
「目標の階数はありますか?」
「欲を言えば30階層までの安定は確認しておきたい。だが最低でも20階層は潜って欲しい。もちろん情報の持ち帰りを優先して構わない」
ふむ、上級冒険者に長期間依頼するなら妥当な所か。
これが女王なら1番下の階層まで全部安全確認して来いなどと言い出しかねない。
急に凄く良心的な依頼に感じてくるから不思議だ。
「期限はありますか?」
「特に無いが、そうだな――50日以内としておこうか。あまりのんびりしていて別の異変が起こりでもしたらいかんからな」
「報告は書面ですか? 規定の書式や専用の用紙などがあれば先にいただきたいです」
「しっかりしてるな……。報告は口頭不可で書面が求められる。だが書き方は自由だ。我々に伝わる形であればその辺りは問わない。そうだな――紙を渡しておくか。取ってきてやるから少し待ってくれ」
応接室に紙束は置いていなかったようで、トマス氏は紙を取りに出て行った。待ち時間になってしまったので金貨の入った袋を取り空間収納に投入しておこう。




