3-2
「きょ、今日はこのくらいで勘弁してやるぜ……」
――もうそろそろ夕方に差し掛かろうかという辺りでフロッサの体力が尽きた。なぜか三流悪役のような台詞を吐いてがっくりと膝をつく。
お肉獲得数は驚異の猪肉62個である。かなり頑張ったな。
「肉は何日でも保管できるが、今日は何個持って帰る予定だ? 全部で62個もあるぞ」
毎日必死で走り回っていたお陰かまだ少し余裕のある5人に問い掛けると、肉の数が多くて困った経験が無いのかひとしきり困惑したあとその場で会議が始まった。
肉の割り振りの話にも及んだようでフロッサも引きずり込まれている。
「――ポンさん! ポンさんが猪肉を引き取る場合はいくら?」
「ギルドに売る時と同じで良いのではないか? 確か1個あたり銅貨10枚だったはずだ」
「同じでいいの?」
「子どもから搾取するわけがなかろう」
眉根を寄せて遺憾の意を示してやると、フロッサはごめんごめんと愛想笑いしながら会議に戻って行った。
しかしなぜ私に売却するのだろう。ギルドに持って行く手間を省きたい、辺りか? 放っておくと生肉の在庫が増えて行くわけだが……まぁ別にいいか。
しばらく見守っていると結論が出た様子。
主に計算の部分で苦戦していたようだ。
その辺りはフロッサが何パターンか例示して頑張っていた。
「――決まりました! 持ち帰るお肉は10個。端数の2個をポンさんに。残った50個のお肉は全て換金して銀貨5枚。そして私の取り分が銀貨1枚で、残りの4枚はお肉と一緒に皆が持ち帰ることになりました」
「だいたい均等割りに落ち着いたか。別に私の分は考えなくていいぞ?」
「そう言うだろうと思ったけど、6で割って余りが出たらポンさんの分にする計算が1番楽なんだよね」
まぁ、持って帰る肉の数がまだ安定しない内は、狙った数字で狩るのは難しいのであろうな。
私は空間収納から銀貨を5枚準備すると、手早く袋を作成し4枚入れてパティに渡す。1枚はそのままフロッサに渡した。彼女は自分の財布を持っているので問題ない。
「では代金の方だけ先に渡しておく。肉は荷物になるので都市に戻ってから渡そう」
「ありがとうございます! うわ、大金!」
「見せて見せて」
「こんなに稼いだんですね……」
「院長先生、喜ぶだろうなぁ」
「だな! 帰ってこれ見せようぜ!」
子どもたちの目がかつてない程に輝いている。
うむ、明るい展望が開けた時に見せる子どもたちの希望に溢れる笑顔というものは、いつどこで見ても素晴らしいものだな……。
「ところでポンさんお願いがあります」
「どうしたフロッサ改まって」
フロッサが居住まいを正した時はたいがい突飛な事を言い出す。今回は何だろうか。
「宝箱に設置されていた魔法陣を流用して大容量のリュックサックとか作れないかな? できれば時間停止機能が付いていれば尚良し!」
――はっ。水帝に宝箱を渡していない。
マズいな、多分怒っているぞ……。
ええとそうではなくリュックだったか。
「可能だな。リュックの底板に仕込んでやれば簡単に作れる。時間停止の方は蓋に仕込めば発動と解除をコントロールできるはずだ」
「消費魔力の方は大丈夫? 背負ってる人が倒れたりしない?」
「系統的に儀式魔術だからな。消費は微量かつ発動時のみだ。蓋を何百回も開け閉めしない限りは問題ないだろう」
「おおー、すごい。ぜひお願いします。背負うのはノイ想定で!」
さりげなくサイズ指定まで入れて来たな。
だがノイはまだまだ体が大きくなりそうなので少し大きめに作る必要がありそうである。
私は魔力の物質化でリュックを作成すると、空間収納から大黒檀の端材を引き出し薄い板を採取する。その板に宝箱から学んだ魔法陣をそのまま焼き付けた。
これだと容量が宝箱と同じで大型倉庫くらいになってしまうが、それ以上は当面必要ないであろう。最後に時間停止の魔法陣がリュックの蓋と本体を跨ぐように設置して完成である。




