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2-6

 

 戦う準備をして待っておけと言い残し飛行の魔術を発動させる。空中で探知波を放つと比較的近くで猪型魔獣を発見した。


 2体ではなく3体居るが別に良かろう。猪たちの頭上まで飛んでいき土属性の魔術で拘束する。

 地面から突如噴き出した土砂の奔流に、猪たちは為す術なく固定された。


 身動きの取れない猪たちに触れて飛行の魔術の対象に加える。では戻るか。




「――帰ったぞ。さぁ止めを」


「ポンさんは倒さなくていいの――ですか?」


 槍を構えたレンの純粋な疑問に少し考える。丁寧な口調が慣れないようだ。別に子どもが相手なのだから口調くらいで怒ったりはしないのだが、彼らもその辺りを計りかねているのだろう。


「私は既に上級冒険者だからな。今さら必要ない」


「上級冒険者なのか! すげぇ!」


 おお、真っ直ぐな敬意が眩しい……。

 ジールもフロッサと同じく冒険者として身を立てたいと考えているのかも知れないな。

 私が倒しても魔力石しか出ないことを話してもいいが長くなりそうなので、ここではやめておこう。


 プギィプギィとお怒りの猪たちは、予想より躊躇のない少年たちによって肉へと変わっていった。普段から狩っているので慣れているのであろうな。


 付き合わせた詫びとして進呈する予定だったが、1個多い分は私たちに譲るそうだ。本当にしっかりした子たちである。


 少年たちの懸念事項も解決したので椅子を取り出してのんびりデザインが完成するのを待つ。

 やはりこういうものは本人の意向をある程度反映させたものの方がいいだろう。




 ――無事デザインが完成した。

 せっかくなので一緒に都市まで戻ることにする。

 フロッサ含め全員が片手に肉を抱えて堂々の帰還である。


 ちなみに肉たちはパティの初級火魔法『火炎』により表面が炙られた状態である。こうすることで品質が劣化しにくい……ような気がするとのこと。


 良く分からないが孤児院での腹痛の発生率が低下しているので多分合ってるのでは? という感じのようだ。検証の仕方が体当たりである。


 10分ほど歩いて出口の巨大な切り株へと到達。うろに設置されている階段を上って外へ――。


「ダメだ! 出るな!」


 先頭を歩いていたジールがビクッとして足を止めた。外に立っていた大人の冒険者に突然怒鳴られたのだから仕方ない。

 私は即座に子どもたちの横を駆け上がり片手剣を抜く。


 ――騒ぎの原因はすぐに分かった。

 ダンジョン入口周囲の広場になっている部分。

 大人の冒険者たちが真っ青な顔で対峙する向こうには、大型のネコ科の魔獣がこちらに顔を向けたまま獲物を値踏みするかのようにゆっくりと横向きに歩いていたのだ。


 見覚えは無いが、セモリナ大森林に生息する強力な魔獣とやらの類いであろう。縄張りが広いのか、狩りをしていたら良さそうな獲物を見付けてしまったのか……。


 見回すと既に何人か倒れている。喰い付かれた形跡は無さそうなので前足に強力な打撃能力があると見た方がいいだろう。


 まったく――。

 せっかくフロッサに新しい友達ができて楽しい気分だったところに水を差しおって。


 片方剣に魔力を高速循環。切れ味を上昇させる。

 足元の周囲を魔力で固定、高速移動の指示を与えた。


 一瞬で猫型魔獣の目前まで移動し剣を切り上げる。

 牛ほどの大きさがある魔獣は驚いて跳びあがった。


 初撃は躱されてしまったがその動きは本能的なものなのだろう、真上に跳び上がってしまった魔獣の首を、降り下ろした片手剣が斬り飛ばした。


 力無く落下してきた魔獣の胴体を放置し振り返りつつ、片手剣を鞘に仕舞う。


「――アル、怪我人が居るようだ。治癒を手伝ってくれ」


 命拾いした冒険者たちによる安堵の溜め息が合唱のように森に響いた。





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