1-10
ダンジョンに向かう前にギルド内の雑貨屋に寄る。
私だけであればさっさとダンジョンに向かうところなのだが、子どもとはいえ女性を連れていると少し覗いていこうとなりがちなのである。
ほほう――携帯食糧か……。見るからに美味しさとは無縁そうな固形物だが嫌がらせ――話の種くらいにはなりそうだ。何個か買ってみるか。
おっ。これはデュラムで作った酒か。隠れ里に持って行ったら喜ばれるかも知れない。まぁ彼らは酒なら何でも喜びそうではある。買っておいて思い出した時に何かと一緒に差し入れてやろう。彼らの気質は好ましいものだ。
むう、回復薬はあまり品質が良くないな……。
濾し布の目が粗いのか透明度が低い傾向にある。
「――ポンさん、どうしたらいいと思う?」
しまった、聞いていなかった。
フロッサが何か相談していたようである。
見ると小ぶりな剣や槍がある辺りで悩んでいる様子。
ふむ……。武器を新調すべきか悩んでいるのか?
確かに『肉ダンジョン』にはフロッサの腰の短剣では威力が足りなさそうな体格の魔獣が出るらしいのだが……。
「直前での武器変更はあまり良くないな。武器によって最適な距離感が変わる。せっかく短剣用に練習した動作が全部使えなくなるぞ」
「うっ。それはアリシアに怒られるヤツ……」
「普段はアリシアに何と教わっているのだ?」
「体が小さい内は敵の攻撃に当たったり受け止めたりした時点で終わりだと思え。とにかく避けろと」
それはまたアリシアらしい教え方だな。
自主練としてフロッサが夕方によく走っているのはその辺りを実践しているのだろう。
「方針として悪くないと思うぞ。尊重してやったらどうだ?」
「うん、そうする……でも一撃必殺にも憧れる!」
「気持ちは分からんでもないが、どの道お前の腕力では厳しかろう。地道に削るしか無いぞ」
「ああ……どこかに細くて軽くて何でもスパスパ切れちゃう剣とか無いかな!?」
「確か帝王が持っていたな」
「それ他人のヤツじゃん……。所有権でモメないヤツがいいなぁ」
「そんな都合のいい剣はそうそう無いだろうな……」
武具に関しては現状維持ということにし雑貨の買い物に戻る。
先ほど見た食料や酒の他になぜか菓子の類いが追加される。
休憩用のアイテムなのだと言い訳していたが食べたいだけだろう。そういうところは子どもなのだな。
細々とした買い物を終えてギルドを出る。
目指す肉ダンジョンは都市の北西にあるらしいので来た道を戻る形になるわけだ。
いや、どのみち都市の門は北にしか無いので外に出るなら北に向かわねばならない。ダンジョンの入口なので門が複数は無いのである。
私の感覚では不便なのだが、門を使用するのがほぼ冒険者だけであるならばそこまで混んでいないはずだ。外は危険なので普通の住民は気軽に都市の外には出ないはずである。
街中を観察すると、散見される冒険者たちよりも普通の住民たちの方がはるかに数が多い。どういった事情があるのかは知らないが、ダンジョン内に住むとは奇特な人々である。
まだ良く分かっていないがこの都市も意外と住みやすかったりするのだろうか……。
懸念としては安全面と物資面だが、ダンジョンという無限の物資供給源がある以上は案外悪くないのかも知れない。
……無限に本が供給されるダンジョンがあったりしないだろうか。今度それとなく訊いてみよう。




