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第二十話 休息

「オルフェはホントに女っ気がないよなぁ、人気だと思うんだけどな。」

「そうかな?ランドみたいな魅力が俺にはないから、女の子が近寄ってこないんだと思うよ?それこそ、父さんもモテなかったって言ってたしね。」

「オルフェの母ちゃんは移民だったっけ?白人なのは知ってるけど、そこらへん聞いてねぇなって。」

「うん、アルブからの移民だって、母さんは言ってたよ。なんでも、母さんの家族は貧民街の出身で、手厚い福祉があるからって言う理由でこの国に来て、結局はアルブに帰っちゃったんだって。だから、母さんも家族がどうしてるのか、生きているかどうかもわからない、って言ってたよ。」

 オルフェ達が十四歳の春、アーヴィンは現在戦場に行っていて、オルフェは修行の求刑がてら、ランドと一緒に外食に来ていた、オルフェとランドの小遣いでなんとかできる範囲、というとチェーン店のバーガー程度のもので、オルフェは体に気を使っていたが、こういう時位は別に良いだろう、そこまでストイックになって、友を失ったら悲しいだろう?というアーヴィンの言葉に従って、時折ランドと外食をしていた。

「んー、バーガーが美味い!」

「ランド、もう少し運動した方が良いんじゃない?恰幅が良いのが良い、って彼女さんには言われてるのは知ってるけどさ、将来的に生活習慣病になっちゃうよ?」

「って言ってもなぁ、俺は運動嫌いだしな。逆に、オルフェがどうしてそこまでマッチョになって、身長も伸びたのか、が知りてぇよ。」

「どうなんだろう?父さんがそうだったから、それが遺伝してるのかも?」

 ランドは小さい頃はオルフェより身長が高かったのだが、いつの間にかオルフェに慎重を抜かれて、現在においてはずんぐりむっくり、という言葉が正しい体型をしていた、社会問題にもなっている「生活習慣病」と呼ばれる、肥満や糖尿病といった病気にかかりやすい、かかってしまって重篤な症状を持った場合、足の指から壊死して行って、最終的には切断をしなければならない事もある、とテレビの番組でやっていたのをオルフェは覚えていた、あまりテレビを見る方ではなかったオルフェだったが、食事時にはルミナがテレビでバラエティを見ている為、その影響で覚えた、というのが正しい所だろう。

 超記憶症候群、ハイパーサイメシアとして、記憶疲れをすることは今までなかった、所謂海馬と呼ばれる脳の記憶回路のショート、やパンク、と言った事はなかった、それが起こる可能性は限りなく少ない、人間というのは、どこかしらで情報取捨選択をしていて、それをオルフェ達超記憶症候群の人間は全て記憶している、という事なのだが、それでも人間の脳というのは過負荷になって壊れてしまう、という事がない程度には容量がある、というのがアーヴィンの教えで、オルフェは自らの性質であるそれを、アーヴィンから受け継いだ、と知った時に、ならばアーヴィンは数十年間に及ぶ全ての事柄を覚えているのか?と疑問を持った、そしてアーヴィンは、そうだと答えた、租の記憶もオルフェには残っていた。

 だから、オルフェは日常における些細な変化、例えば人間が髪の毛を数センチ伸ばしただとか、少しだけ化粧をしただとか、少し体調が悪く顔色にごくごく微量の変化があるだとか、そう言った事柄を全て把握していた、仲間内では「オルフェは全てを覚えている凄いやつ」と言われていて、肯定的に捉えられている為に、オルフェは隠す事をしなかったが、アーヴィンはそれが原因で避けられていた事もあったらしい、そもそもがアーヴィンの幼少時代と、現在においては軍の扱いも違う、軍の印象も違う、アーヴィンが子供の頃は、まだまだ現役で戦争が勃発していて、軍はその対処をしていた、その軍の狙撃手として、アーヴィンの父アーノルドは活動していた、という表向きの発言をしていたアーヴィンは、周囲から避けられていたんだとか、そんな話をしていた。

「だってよー、運動が苦手なのはしゃーねーべー?」

「なら食事を気を付けるとか……。俺だって、ランドに足を切断するなんて事になってほしくないんだよ?」

「そりゃ、その気持ちは嬉しいけどよー。でも俺、食う事が幸せだしなぁ。」

 もぐもぐとバーガーを食べ、ポテトを頬張りながら、ランドは頬を膨らませて文句を言っている、オルフェの身長だったり筋肉がつきやすいのが遺伝だとしたら、ランドの脂肪がつきやすく中背を超える事がない、というのもまた遺伝になってくる、ランドの父も母も、兄や姉も皆太っていて中背程度、なランドの家系としては、それが当たり前の話で、逆にオルフェの様に筋肉質になるにはどうすれば良いのか?と疑問が浮かんでくる、程度には遺伝的に太っていた。

 食欲旺盛なのは昔から、それこそジュニアスクールに通い始めた頃から、他の同級生の二倍は弁当を持ってきて食べていたランドが太ったのは、ある意味では必然と言えるだろう、食事内容も、オルフェが鶏肉を中心としたタンパク質メインな食事をしているのに対して、ランドは脂を使った料理が多い、好きな料理はバーベキューで脂ののった牛肉のステーキを食べる事だ、と言って憚らないランドは、必然的に太ってしまうのも仕方はない環境、にいるのだろう。

「そうだ、彼女さんとはうまく行ってるの?」

「おうさ、この前なんて……。ぐふふ。」

「何かしたの?」

「いや!これはオルフェ相手と言えど言えないってやつだ!彼女との内緒話だからな!」

 話題を変えてランドの彼女の話を振ると、ランドは何やら特別な事、彼女との秘め事がある様子だ。

 オルフェはそれが何だかはわかっていなかったが、要するにランドは童貞を捨てて、彼女とセックスをした、という事なのだが、オルフェは性的な知識には乏しい、というよりは自慰行為こそすれど、女体を相手に性交渉をする、という考えに至っていなかった、思春期の青年がそれで良いのか、と問われた時、微妙だという発言をする大人が多いのだろうが、オルフェは筋トレをして、銃の鍛錬をして、それが当たり前の人生を送ってい誰が為に、そう言った性にまつわる事、に触れる機会がなかった、流石に赤子はコウノトリが運んでくる、などと言う子供らしい表現をするわけではなかったし、性交渉をした結果に妊娠して、そして女性が出産をする、と言う前提知識はあったが、それをランドがした、自分達がそういう事をする年齢になった、というのがいまいちピンと来ていない、というのが正しいだろう。

 と言っても、ランドもオルフェも自慰行為をしてから声が低くなった、第二次性徴、正しく思春期を迎えて、オルフェはアーヴィンに少し声が似てきていた、それがオルフェにとっては嬉しい事だったのだが、アーヴィンと同じ声質、になる為には、煙草と酒を嗜む様にならないといけないだろう、酒焼け煙草焼け、という言葉がある様に、それらを嗜む事で声質が変わる、それもアーヴィンから得た知識だった。

「オルフェもそろそろ彼女の一人でも作った方がいいぞぉ?いつまでも純粋でいても、良い事なんてないって父ちゃんが言ってたしな!」

「あはは、そこに関してはまだまだ先の話かな。俺は修行中の身だし、女の子と付き合っても修行に時間を使うからさ、あんまりデートとかもできないと思うんだ。」

「それもそっか。」

 バーガーを食べて、たまにはこういったジャンキーな食事もいいものだ、と考えながら、オルフェは久しぶりに飲む炭酸飲料に驚いていた、炭酸が喉を通っていく感覚、を久しぶりに感じて、それにのどが驚いている、が正しい表現と言えるだろう、それ位にはオルフェは普段から食事や飲み物に気を使っていた、それがオルフェにとっては当たり前で、ランド達友人からしたら異常な事で、乖離している事実はわかっていたが、父アーヴィンの跡を継ぐと決まった以上は、その程度はしなければ、とオルフェは考えていた。

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