↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/29

第二話 家族

 話は七十年前から始まった、ジグモンド家百一代目の当主として産まれたオルフェ、ファルカシュ・ジグモンドは、代々「ガンナーの英雄」を輩出している家系に生まれた。

 ガンナーの英雄、と言うのは、世界体系と言う幾つにも分け隔てられた「世界」における傭兵稼業、ガンナーならガンナーが、戦士なら戦士が、それぞれ「神」に使役されていて、その中でもジグモンド家は「ガンナー」の役割を担っている家系だった。

 と言っても、「ジグモンド」の名が世間や世界に知れ渡るわけではない、英雄達は「ガワ」をかぶっている、ガワと言うのはその時その時の活動履歴の事で、「英雄がいた」と言う記録や記憶はあるものの、それがオルフェをはじめとしたジグモンド家の人間だ、と言う認識は残らない。

 それがこの世界体系における「英雄」の在り方であり、英雄として活動する者の定めだった


「hahaha!オルフェ、お前さんは英雄になりたいか?」

「うん!」

 五歳の頃のオルフェは、父アーヴィンの話を聞いて、目を輝かせていた、母ルミナはジグモンド家に嫁いでから十年、当たり前のごとく数か月から一年家を空けるアーヴィンの代わりに、オルフェと共に家を守っていた、そんな生活の中で、オルフェはアーヴィンの英雄譚を聞くのが好きだった、ガンナーとして活動を続けていた父アーヴィンと言うのは、オルフェにとっては羨望の対象だった、憧れて、いつの日か自分が受け継いでガンナーの英雄になるのだ、と夢見ていた。

「Umm,ではオルフェ、ガンナーに必要な技術の中で、一番大切な事はなんだと思うかね?」

「えーっとね、うーんとね、なんだろう?」

 オルフェは純粋な琥珀色の瞳をアーヴィンに向ける、アーヴィンの素養を受け継いでいるその瞳は、輝きを見せながらアーヴィンを見ている、アーヴィンは笑いながら、オルフェの子供らしい質問が心を安らがせる、と考えていた。

「戦場で必要な事、それは冷徹になる事だ。誰が敵になろうと、誰が味方になろうと、戦う事を放棄しない、戦う事を、人を殺める事を躊躇わない、それが俺達英雄に必要な、第一の素養だぞ、オルフェよ。」

「れいてつ?」

「そうさな、お前さんに伝わる様に伝えるのには、少々骨が折れそうだ。まぁ、そのうちわかる日が来る、それを出来なければネグサレするだけだ、それを覚えておくと良いな。」

「うーん……。お父さんのお話って、むずかしいね!」

「hahaha!それで良い、それで良いんだ、オルフェ。お前さんはそれでいい、いつの日かは俺の跡を継いでもらわんと困る、その時には冷徹にならざるを得んこともあるだろう、ただ、今はそれでいい、お前さんがそうあってくれる事が、俺にとっては救いだ。子供が子供らしく在れる事、なんてのは英雄稼業をしてると欠落する感情でな。」

「んー……?」

 幼い瞳、純粋な瞳をアーヴィンに向けるオルフェは、ルミナがそろそろ夕食を出す、という事で一旦その話を終わりにした、オルフェがそれを知るのには、まだまだ幼い、幼すぎる、とアーヴィンは感じていた、だから詳細な事を告げなかった、最終的にはオルフェはジグモンド家の跡継ぎとして、神に使役されるガンナーの英雄として活動をする事になるのだろう、異世界へと渡る力を持っている者は少ない、神によって異世界へと転送されると言う「事象」に耐えられる肉体と精神と魂を持っていなければ、異世界へと渡る事は出来ない、そしてオルフェはそれらの素養をもって生まれてきた、それをアーヴィンを使役している神が見逃すはずもない、だからいつかはオルフェに役割を受け継がなければならない日が来るのだろう。

 だから今はそれで良い、今だけは、その琥珀色の瞳の純粋な眼差しを守りたい、アーヴィンはその為に英雄稼業を続けているのだ、と生来の髪質であるジェリーカールヘアを整えながら、夕食の前にと酒を煽っていた。


「オルフェ、整えましょうか。」

「お父さんと同じが良い!」

「はいはい。」

 夕食後、少し伸びてきた髪の毛を切ろうと床屋に向かうオルフェとルミナ、手を繋ぎながら、オルフェは夕暮れの道と夕陽を瞳に映していた。

 首都ネグルから少々外れた郊外、少々田舎情緒の溢れる一軒家、に住んでいるオルフェ達は、かつては首都に住んでいた時期もあったとアーヴィンが言っていたが、喧騒が面倒になったから、とルミナと結婚した頃に引越しをしたのだ、と言っていた事をオルフェは覚えていた。

 黒人と呼ばれる人種が集まっているコミュニティだった首都ネグルを脱して、郊外にある街であるランドに引っ越してきたのが、オルフェを身ごもっている頃の話だ、とアーヴィンは話していた、白人種であるルミナは移民と呼ばれる類の外国人で、ネグルにおいては好奇の視線にさらされる、そのストレスから解放する為に、と言うのもあったのだが、諸外国においては差別の対象ともされている黒人種が国家を形成して、この世界においてもっとも発展した国、を作り上げたのだから、諸外国からしたらつまらない結果ではあるのだろう。

 ルミナは貧乏な国と呼ばれているアルブからの移民だった、白人種が発展した国を作るのにあたって、発展途上国からやってきた移民の子孫、それがルミナだった、オルフェが生まれるにあたって、黒人種になるか白人種になるか、それがわからない、アーヴィンもルミナもどちらでもいいとは思っていたのだが、父であるアーヴィンによく似た黒人種として生まれたオルフェは、アーヴィンによく似た髪質をしていて、それを父と同じにして欲しい、それを普段からねだっていた。

「きれい!」

 夕陽を眺めながら、元軍用車に乗って街の床屋まで向かうオルフェとルミナ、ルミナもそろそろ髪が伸びてきたから毛先を整えてもらおう、と考えながらバギーを運転する、マニュアル車であるバギーを乗りこなす白人種はなかなかいない、基本的に白人種の国ではオートマ車が主流で、マニュアル車は旧式だ、と言われている、運転の資格取得自体にはマニュアルの講座もあるが、アルブにおいては基本的にオートマ車が当たり前で、ネグルではレトロブームでマニュアル車が流行っている、からアーヴィンはマニュアル車を買って乗っている、と言う経緯があった。

 オルフェはいつの日か自分も運転がしたい、と言ってアーヴィンやルミナが運転している様をつぶさに眺めていた、これから先自分がその技術を習得していくに当たって、両親と言うのは良い見本なのだろう。

「お母さん、きれいだよ!」

「そうねぇ、ちょっと眩しいけれど、綺麗ね。」

 バイザーを降ろして、日除けをしながら車を運転して、街へと向かっていく二人。

 英雄稼業がどんな仕事で、どんな役割で、そんな話をしながら、オルフェはこれから先そこに行くのだ、とわくわくしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。