第十五話 次の英雄として
「ふむ、やはりオルフェが次のガンナーかね。そうではない未来を望んでいたとしても、神サマのいう事は絶対的な支配力を持つ、それが俺達ジグモンド家に伝わる伝承だ、逆らったものは存在毎消されてしまう、だとかそんな眉唾な話があったな。」
オルフェが十歳になった春、オルフェはジュニアスクール五年生になり、相変わらずランド達同級生と仲良くしながら「いつかは英雄として招集される日が来る」事を覚悟して、それに憧れて、体を鍛えている日々だった、オルフェは中背ではなくなっていた、同級生の中では身長が一つ飛びぬけて高くなっていた、ジグモンド家の男子は基本的に身長が高いが、それを受け継いでいる、という事なのだろう。
アーヴィンは白髪交じりになってきた髭を撫でながら、自分がそろそろ「英雄としては潮時である」という事実と、ガンナーとしてオルフェを鍛えなければならない事、を理解していた、神が交信をしてきて、次のガンナーの英雄はオルフェに、という事を指名してきた、という事は、もうじき代替わりをする、という事になってくるのだろう。
アーヴィンは煙草を吸い、バーボンを傾けながら、オルフェの未来について考える、ジグモンド家百一代目の英雄として、ジグモンド家を継ぐ者として、育てて来たには育ててきた、オルフェにはジグモンド家を継いでもらわなければならない、それはアーヴィンも承知の上だった、ルミナも承知の上だった、それがジグモンド家の当主としての定め、当主として、継承を行わなければならない事柄、それはわかっている、アーヴィンも、父アーノルドからそうして継承をして来た、されて来たのだから。
わかってはいる、わかってはいるが、当たり前のごとくに我が子を戦場に送らなければならない、それを「父親としてのアーヴィン」が拒絶している、そんな感情だろう。
「ふむ、ではオルフェに銃を与えなければならなかろう?」
神からの交信、神から与えられる「神の権能の一部」である、ガンナーとして活動していく為に絶対必須な銃を、オルフェに与えなければならないだろう、代替わりをする前に、オルフェにイロハを叩き込まなければ、アーヴィンはそれだけを認識して、神との交信を終えた。
「オルフェ、帰って来たか。」
「お父さん、ただいま!」
「ふむ、お前さんの元には神サマはまだ交信をしてきていない、という事か、これは俺の役割だ、と言う事だな。」
「どうかしたの?」
夕方、オルフェが帰ってきて、春の麗らかな日差しの中で銃を磨いていたアーヴィンに話しかける、アーヴィンはオルフェに神が接触していない事を確認してから、父アーノルドが自分にそう告げた様に、オルフェにも言葉を告げる。
「オルフェ、次の英雄に、神サマはお前さんを御所望だ。銃を選んで、これから先は鍛錬を積んでいく事になるだろう。ふむ、俺が教えられる事、俺が叩き込むべき技術、ここから先は、親子としてでもあるが、師弟として活動をしていく事になるな、分かったな❓オルフェよ。」
「僕が、英雄になるの?」
「そうだ、これはジグモンド家の当主の決まり事、ハイパーサイメシアを受け継いだ者の責務だ。銃は何が良いかね?神サマに望め場、その銃を与えてくれると思うがね。オルフェは確か、マクミランを気に入っていなかったかね?」
「うん、マクミランーTAC50が一番かっこいいなって、思ってるよ?お父さんが使ってるM82も素敵だけど、僕が好きなのはそっちかなって。」
「では、神サマに祈りを捧げると良い、これから先英雄として生きていく事、そして神サマの手下として、傭兵として生きていく事、人を殺める覚悟を持つ事、そして、英雄同士で友になったとしても、いつの日かは殺し合いになる事を覚悟する、その祈りを捧げる事で、神サマはそれを受諾してくれるだろう。オルフェ、こっちに来なさい。」
アーヴィンに連れられて、オルフェは地下にある「ジグモンド家の歴史」におけるガンナーとしての歴史が保管されている、という場所に初めて入った、今まではアーヴィンの話を聞いて、自分自身は入った事がなかったその場所に、オルフェは初めて立ち入った、元々はネグルの邸宅にあった、というその場所は、ポータルという転移装置をドアにする事で、何千年と続いてきた「ジグモンド家の歴史」を保管する為の空間に繋がっていた、オルフェは知らなかったが、それはこの世界とはまた違う世界に属する空間であり「英雄として活動をした者達」の墓標として機能している空間でもあった、アーヴィンがネグルを離れるにあたって、どうやって誰にもばれずに百代続くジグモンド家の銃を運んだのか、という答えは「別の空間を切り取った転移場所として、ドアを設定していたから」が答えだった。
「ここで祈りを捧げると良い、神サマが応えるのであれば、お前さんは正式にジグモンド家の百一代目の当主となるだろう。」
「……。ここに……、お祈りを……。」
小さな像、神を模している、小さな像が鎮座していた、それに対して、オルフェは祈りを捧げる、英雄として生きてく事を、人殺しと言われようと何だろうと、父アーヴィンと同じ道を歩んでいきたいと、その為に、神に従う事を誓う、と。
その祈り、聞き入れた。
声が聞こえた、神の声、とアーヴィンが称している声、何処にいて、何処に所在があって、どんな正体をしているのか、それすら問う事を許されていない、「英雄を使役している神のひと柱」である、ガンナーの家系を扱ってきた神、その神からの交信、をオルフェは初めて受けた、それが神の声だと、自然と理解した。
「……。これが、僕の武器?」
「そうだ、マクミランを所望したのだから、それが基本の形になる。まあ、その世界によって見た目や扱いが変わる事はあるがね、基本的にはそれをベースに鍛錬を積む、それがこれからお前さんにとって必要になって来る事柄だ。」
「……。うん。」
像が光って、オルフェの手には対物狙撃銃であるマクミランーTAC50が握られていた、これから先使っていく愛銃、世界によってその特性を変える性質を持つ銃、アーヴィンが持っているM82と同じで、その世界の特性によって性質を自動的に変える、そして魔力の籠め方によって、様々な弾丸を撃てる対物ライフル、それをオルフェは神から受け取った。
「さて、オルフェよ。これから先、ジュニアスクールに通う事は構わんがね、基本的にその銃と寝食を共にすることになるだろう、その程度には、俺達ガンナーにとって、銃っていうのは大切な武器だ。手入れの方法、射撃の方法、諸々学ばなければならん事があるだろう、実戦で撃つのと、座学での勉強は大きく違う、その事についても学んでいかねばな。」
「うん!お父さんと一緒の英雄になれる様に、僕頑張る!」
「hahaha!お前さんはまだまだ純粋だな、オルフェよ。」
「そうなのかな?」
地下室を出て、オルフェは銃の重みを感じながら、アーヴィンがそうしている様に、肩に銃を載せてしゃんとして歩く、アーヴィンが軍人として活動をしている、という表向きの理由を使う為に、軍隊としての作法を使っている、その真似でないが、銃を持つ手は自然ときっちりとしなければならないだろう、とオルフェなりに考えた結果、がアーヴィンと同じ形を取る、だった。




