第六話『ミランダ警告で逮捕、連稿かな?』
【作品に関するご注意】
本作品はフィクションです。劇中に登場する人物、団体、名称、宗教法人、および事件はすべて架空のものであり、実在の人物や実在の出来事とは一切関係ありません。
俺は、ビリケンに近づき、真正面で背筋を伸ばし、目線を彼の目に再び据えた。
「藤原隆、あなたには黙秘権がある。
供述は法廷で不利な証拠として使われる。
あなたには弁護士に立ち会ってもらう権利がある。
もし弁護士を雇う資金がなくても、国選弁護人をつけることができます」
「はぁ?」
「わからないのか?
美月さんはお父様の死因を他殺だと思っているんだよ。
その調査ために俺を雇った。
遺言書のコピーなんて、大したことじゃない。
警察はまだ事件として扱っている。疑うなら左京警察署で確かめればいい。
そして、俺は調査を完璧にこなしてきた。
この状況を見ても、藤原隆、お前がやっただろう」
「な、なんやと、突然何言うとるんや、気狂てるんか、この、お、俺が何をやったというんや?」
「こ、殺しなどやっとらんぞ」
藤原の挙動は明らかにおかしくなり、黒服に目線がいく。
その目線を俺は追った。
黒服は俺から顔を隠すように伏せた。
「じゃぁ、誰がやったんだ?」
「知らんと言ってるやろ、勝手に、自然死やろうが」
「確かか?人が、それまで元気だったのが勝手に自然死するのか?」
「心臓発作とか、脳梗塞とかあるやんけ」
「それなら検視でわかるよな」
「け、検視やと」
「当たり前だろ」
「俺は知らん、何も知らん」
「では、なぜ藤原堂の社長の遺言書にそれほど執着するんだ?
内容は見たから知ってるだろう。
言ってやろうか、美月さんが筆頭株主になることだ。
それに何か気になることがあるのか?
今、現時点では、美月さんの父親が死んで、藤原堂の代表者は藤原隆さんだ。
しかし、美月さんが筆頭株主になれば、法的には会社は美月さんのものになる。
それがあなたにとって許されないことであるなら、遺言書には興味津々ですよね。
誰かに金を払ってでも処分したいですよね。
そこまで会社のトップで自分のモノにしたいのなら、殺人容疑者の動機としてなりたつんじゃないかな、
つまり刑事告訴の証拠にもなる?」
「いいや、俺は何もやってない。やってないものはやってない。」
ビリケンの目線がさらに黒服に向けられ、俺の目の前の立ち位置から、
そちらの方に少しづつ歩みはじめた。
「それから、斉藤佐吉、立て」
俺は佐吉の方へ歩きだし、さきほどのビリケンで見せたように彼の正面に立った。
「お前には共犯の容疑がある。
そして、お前にも黙秘権がある。供述は法廷で不利な証拠として使われる。
あなたには弁護士に立ち会ってもらう権利がある。
もし弁護士を雇う資金がなくても、国選弁護人をつけることができます」
「な、な、んですか?」
「わからんのか、ミランダ警告だ」
俺は笑いを堪えるので必死だった。
一度これを誰かに言ってみたかったのだ。
一回目はちょっと噛んだけど、二回はスムーズに言えたな・・・・。
そう言って、佐吉の腕を素早く取り、後ろ手になるように回り込み関節を決めた。
「いててて、、、」
「動くな、これからお前を共犯容疑の被疑者として連行する。それから、」
と言って、左手で佐吉の腕を固め、右手でジャケットの胸ポケットからスマホを取出し、
「ここまでの会話はすべて録音してある、
俺が無事帰るまで録音し続ける、異論あるやついるか?」
誰も何も言わなかった。
「いないか、そこの若い衆さん、
すまないが、玄関入口の鍵を開けてくれませんか?」
若者は黒ずくめの男に判断を求める視線を送った。
黒服は軽く顎をしゃくり、用済みとも思えるビリケンの方の歩みよって行った。
黒服の関心がビリケンに移ったことを確かめてから俺は言葉を発した。
「そうそう、藤原さん、今でもこの遺言書のコピーは、いりはりますか?
相続人でない人が、美月さんの自筆の住所、電話番号を書いた封筒とコピーもっていると、
変に疑われても私は知りませんからね、ちなみにこの封筒も写真撮ってます」
「い、い、今はいらんわ、いろいろとこっちも専門家に相談するわい」
「その方が賢明だと思います。
それから、ストーカーとか美月さんが怖がるような脅す行為もやめておいた方がいいですよ。
同じ理由です。疑いなんてかけられない方がいいですからね。
では、開錠、お願いします」
俺はそういって、佐吉を連行し事務所から出口の方へと向かった。
外に出て一度振り返ったが、誰も追いかけてこない。
「佐吉、大人しく歩けよ」と言い、美月の停車した車の方へ歩いていった。
工場の監視カメラが追えなくなるあたりで、佐吉の腕をはなした。
「そこの車に乗るぞ」
佐吉は何も言わなかった。
運転席には、お行儀の良い美月がいた。
ペットボトルのお茶を持っていたので、自販機で買ったのであろう。
俺は運転席の扉を開け、
「佐吉、運転しろ、美月さんと俺は後ろだ」
と言って、美月が出てくるのを待った。
彼女は何も言わなかったが、佐吉を見て少し驚いた様子であった。
美月が運転席から出てきたところで、後部座席のドアを開け彼女に先に入ってもらった。
俺は、ズボンのポケットをまさぐり、
美月が買ってきてくれた煙草とライターを取り出した。
運転席のドアをノックし、窓が開いてきたところで、
「ちょっと待ってね、一服させてね」
と車内の面々に告げた。
二人は黙ったままであった。
煙草に火を灯し、腕時計で時間を確認した。
2時前だった。
入る時1時だったから約一時間か・・・。
もう少し早いかと思ったが、どうも実際の時間と間隔がズレるな。
さて、どうしたもんか・・・・。
煙を大きく吸い込み吐き出した。
紫煙というが、この暗闇ではただの靄にしか見えない。
さきほど乗り込んだ工場へ目線をやるが、静かなもので何も変わりはない。
「ふわぁ~」
あくびが出た。
とりあえず、今夜の主演男優賞は頂きってことでいいかな。
それにしても、人ってのは何かにつけて意味付けしたりするが、なんでだろうね。
きっと、暇なんだろうな。
煙草の煙の行く先を見つめつつ、数回ふかした。
モヤモヤとする気分が晴れることはない。
いや、暇の逆だな。
うん、行きますか、思い立ったようにそう心で呟き、
その場で煙草を捨て、足で踏みつぶそうと思ったが‥‥、やめた。
なぜやめようと思ったか、それはこれを見て、非難轟々とする人らがいるからだ。
「サキチー、灰皿持ってるだろ?」
「灰皿ですか? いや、持っていません」
「いや、持っているだろうが、持っていなきゃ、この吸った煙草どうすればいいんだよ?」
「い、い、いや、そんなこと言われても、、パワハラみたいに・・・・」
「これ使ってください。もう飲みましたから」
美月はそう言って、窓からペットボトルを渡してくれた。
「おぅ、ありがとう、さすが気がきくねぇ、満点だよ、佐吉見習えよぉーーー
はっはっは、」
そう言って、吸ったタバコをペットボトルの中で消し、後部座席に潜り込んだ。
「佐吉、出してくれ、先に美月さんを家まで送ってくれ。
美月さん、明日の昼過ぎに、美月さんの家に報酬を取りに行きます。
その時、今日の説明もします。
住所は、さっき封筒に書いてくれた所でいいですよね」
少し間をおいてから、美月の「はい」という声が聞えた。
「じゃあ、そういう事で、レッツゴー」
第六話「はじめまして村市です。メンチ切ります」終り。
次回第七話『緑茶と茶菓に茶番でおかしいことだらけ』
投稿予定日:6月20日、18:00
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