第四話『いないいないばぁ、から行きましょう!』
【作品に関するご注意】
本作品はフィクションです。劇中に登場する人物、団体、名称、宗教法人、および事件はすべて架空のものであり、実在の人物や実在の出来事とは一切関係ありません。
2コール目で、電話は繋がった。
「おい佐吉、今どこにいるんや?何しとんねん?」
『村市さん・・・』
佐吉はスピーカーで話しているのがわかった、そして周囲に誰かいる気配がする。
先手必勝だ。
「遺言書あるで、持っていこか?」
『えっ、クライエントの女性は?会ってない言うてましたやん』
「あの電話のあと契約したからあの時はクライエントちゃうやん、何言うとるんや」
『・・・・・、娘さんそこにいるんですか?』
「おらんよ。それより、今電話かけたん俺や、まず俺の話聞けや。
周囲誰かおるやろ、聞えてるぞ、誰がいるねん、遺言書の件でおるんやったら、代われよ」
モサモサ、ゴサゴサといった雑音が入った後に誰かが電話口に出た。
『もしもし、藤原堂の社長の遺言書もってはるんですか?』
「どちら様でしょうか?本件、詳しいこと聞きたいのであれば、まず名のってもらえますでしょうか?」
『藤原、言います。』
「下の名前もお願いします」
『藤原隆、美月の叔父ですわ』
「どうも初めまして、藤原隆さん、それでお兄さんの遺言状をどうしたいのですか?」
『どうもこうも、身内の話ですわ、お宅が持ってはるなら、渡してもらえますか?』
「藤原さん、私が誰かわかってお話されてますか?」
『佐吉さんから、なんや美月が雇った探偵屋さんって聞いてますけど?』
「そうですか、間違いはないですね。」
それで、私があなたにその遺言上を渡して、私に何の得があるんですか?」
『得ですか?』
「そう得、世の中損得ちゃいますのか?」
『お礼はしまっせ』
「具体的に?」
『いかほどで』
「相場はそこの佐吉が良くしっている。なぁ、佐吉、俺の相場を伝えてあげてくれないか?
それで、藤原さんが合意したら、今すぐ遺言書持って行きますよ」
なにやら、ボソボソと声が聞える。
佐吉、藤原、それ以外に数人いるようだ。
こういう時の時間の進み方は、いつもより長く思えるのは何故だろう。
丁度良い具合に、グレンフィディックで戯れることができる。
グラスから若干多めに口に含み、今度は喉に流し込むように飲んだ。
酒のことはあまり詳しくないが、このスコッチはとかく飲みやすい。
『もしもし』
藤原の声だ。
「はい」
『50でいいんでっか?』
「おい、佐吉、いつから俺の相場が50になったんや!ふざけているなら切るぞ」
『えっ、村市さん、な、なんで、違うん?』
とりあえず、俺をこんな面倒くさそうなトラブルに巻き込んだ奴のお仕置きはこれぐらいにして次に進むか。
「まぁ ええわ、夜も遅いし、50+αで商談成立や。
京極さん、50に色つけてや、それから、その金、佐吉に渡してもらえますか、
それ確認して、すぐそこ遺言書持っていきますわ」
『今、そんな現金ないで』
京極の声だ。
「いっぱしの企業のお偉方様が、50+そこらの現金持ってないわけないでしょ」
『ちょい、待ってや』
「佐吉、お前、京極さんの俺に対する債務連帯保証人としてとりあえず50+の現金預かっておけ、わかったか?」
しばらくしてから佐吉の声が聞えた。
『わかったよ』
「佐吉、メールでそこの住所送れ、これから準備してそこ向かう、
じゃあ切るぞ」
自分から電話を切った。
池谷マスターは素知らぬ声でスマホを弄っている。
「マスター、ごちそうさま。たしかこのへんでセルフレンタカーあったよな、どのへんやったけ?」
俺はいくつかのセルフレンタカーに登録している。
咄嗟の移動手段に便利だからだ。
マスターにセルフレンタカーの場所を教えてもらい、スマホで予約操作をしてる最中に美月は戻ってきた。
「ありがとう、じゃ、行こうか、藤原美月さん」
「えっ、どこにですか?」
「お仕事だよ。あっ、そうそう、それ飲む?」
美月のグレンフィディックを指さした。
「い、いえ大丈夫です。お水もらいます」
「そう。じゃぁ、もらっちゃうね」
といって、美月のオンザロックを飲み干して、外に出た。
セルフレンタカーの場所に行く途中、佐吉からSMSで場所情報が入った。
大門自動車整備株式会社、場所の確認をすると、上鳥羽、近鉄沿線近くにある。
「美月さん、大門自動車整備株式会社って知っていますか?」
「ええ、うちの会社の関係会社です。」
間違いないな。
「これから、そこへ行きます」
「えっ、な、何…」
「そこに叔父さんがいますから、私が話をつけてきますね。
美月さんが煙草買いに行ってくれてる間に電話で話をしました。大丈夫ですよ」
「な、何を話したんですか?」
「いろいろとです。おっと、あそこのセルフレンタカーで行きましょうか。
美月さん、車の運転はできますか?」
「できますけど、あたし・・・・、」
「俺のアプリで開けるんで、運転は任せます。
大丈夫です、整備工場に着いたら、外で、車の中で待ってくれてるだけでいいですよ」
セダンで手頃なやつが欲しかったが、カローラアクシオしかなかった。
運転席の扉を開けると、仕方がなしといった様子で美月は座席についた。
「鍵はダッシュボードですよ、さて行きましょう。ゆっくり安全運転で行きましょう、
明け方までに着けば大丈夫ですから」
呆れたような表情を露わにし、美月は車にエンジンをかけ走り出した。
この時間なら通常運転で十分、十五分で辿り着ける距離だろう。
右手方向にライトアップされた京都タワーが見える。
時代とともに街の有様が変わっていくなかでこの建物はずっと同じだ。
京都市のシンボルで一つの違和感もない。
いいデザインだ。
確か、ヤマダ、タロウではない、・・・誰のデザインか今度調べておこう。
今は少し考えをまとめる必要がある。
俺は目を閉じた。
「着きました」
「んっ」
どうやら俺は寝ていたようだ。
スマホで時間と場所を確認した。
午前一時頃であった。場所は近鉄沿線の上鳥羽。
スマホを弄りながら、
「よし、では、行ってきますね、すぐ終わりますから。
あっ、そうそう途中のコンビニでジュースとか買えば良かったですね、すみません。
あそこに自販機があるんで、喉が乾いてたら何か適当に買ってください。
それで、ここで待っててもらえますか?」
「わかりました」
「ありがとうございます。信用してますよ」
そう言って、俺は建物に向かった。
第四話「いないいないばぁ、で行きましょう!」終り。
次回第五話『はじめまして村市です。メンチ切ります』
投稿予定日:6月17日、18:00
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