第九話 午前二時の通話
第九話です。
今回は、
少しだけ”普通の夏休み”っぽい空気を
書きたくて、
会話多めになっています。
深夜の通話って、
どうでもいい話をしてる時間なのに、
なぜか記憶に残りますよね。
深夜一時十八分。
レンのスマホが震えた。
画面を見る。
グループ通話の通知。
黒川ユウトが通話を開始しました
レンは少し迷ってから、
通話ボタンを押した。
『お、きた』
ユウトの声。
やけのテンションが高い。
「うるさ......何時だと思ってんだよ」
『夏休みだぞ?』
その後ろで、
ゲーム音みたいな電子音が鳴っている。
「またゲームしてんのか」
『負けたから萎えて通話始めた』
呆れていると、
もう一人参加しました。
佐伯ナギが参加しました
『......こんばんは』
少し眠そうな声。
レンは思わず笑う。
「佐伯、お前ちゃんと喋れたんだな」
『失礼』
『うわ、今ちょっと空気柔らかくなった』
ユウトが茶化す。
「お前は黙ってろ」
『はいはい』
通話越しに笑い声。
窓の外では、
夏の虫の声が響いていた。
最初は、
本当にどうでもいい話だった。
コンビニの新作アイス。
宿題。
おすすめの動画。
ユウトがふざけて、
ナギが呆れて、
レンが笑う。
そんな時間。
レンは少しだけ思った。
こういうの、
嫌いじゃないかもしれない。
『そういやさ』
突然、
ユウトが声を落とした。
『昨日の動画の件なんだけど』
空気が少し変わる。
ナギが小さく生きを吐く。
『......まだ再生数が増えている』
「は?」
『非公開なのに』
レンは黙る。
イヤな沈黙。
その時。
ザッーー
通話にノイズが混ざった。
「......?」
『お前んとこ?』
「いや」
『私も違う』
一瞬だけ、
誰も喋らなくなる。
ノイズはすぐ消えた。
でも。
通話画面の人数表示が、
”4人”になっていた。
レンの心臓が止まりそうになる。
「......おい」
ユウトも気づいたらしい。
『誰か参加した?』
「してない」
『私も』
沈黙。
画面には確かに表示されていた。
通話参加者:4人
でも、
アイコンは黒いまま。
名前もない。
「......バグだろ」
そう言った瞬間。
ザーッーー
またノイズ。
今度は、
さっきより近かった。
そして。
『......れん』
聞き覚えのある声だった。
小さい。
でも。
確かに聞こえた。
レンの背筋が凍る。
『お、おい今の......』
ユウトの声が震える。
ナギは何も言わない。
通話の向こうで、
浅い呼吸音だけが聞こえていた。
ザーッ。
ザーッ。
その音に混ざって。
『みつけた』
ブツッーー!!
突然、
通話が切断された。
「っ......!」
レンは飛び起きる。
静かな自室。
エアコンの音。
暗い天井。
でも。
スマホ画面だけが、
白く光っていた。
そこには新しい通知。
朝倉ミナが通話に参加しました
時刻。
午前二時三分。
読んでくださってありがとうございました。
今回は少し、
夏休みの深夜感を意識していました。
夜中の通話って、
楽しいはずなのに、
急に変な空気になる瞬間がありますよね。
個人的に、
みんなでくだらない話をいている時間が結構好きです。




