第八話 アーカイブ
第八話です。
今回は、
”記憶に残るもの”
を少し意識して書きました。
消したはずなのに残っているものって、
たまにありますよね。
「これ、絶対変だって」
昼休み。
教室の隅で、
黒川ユウトがスマホ画面を睨んでいた。
レンと
佐伯ナギも、
その横を覗き込む。
画面には、
昨日の配信アーカイブ、
海沿いの道路を映しただけの、
二時間ほどの動画だった。
問題のシーンで、
ユウトが動画を止める。
街灯。
ガードレール。
その奥。
白い制服姿の女子が、
ぼんやり立っている。
「......昨日より近くないか?」
レンが呟く。
「だろ?」
ユウトが青ざめた顔で頷いた。
「最初見返した時、
もっと後ろだったんだよ」
「は?」
「でも今朝見たら、
少し近くなってる」
ナギが無言でスマホを取り上げる。
数秒後、
画面を見つめたあと。
「......これ、コメントも増えてる」
「コメント?」
ナギはスクロールする。
動画は昨夜の辞典で配信終了している。
なのに。
『今こっち見た?』
『さっきまで顔なかったよな』
『時間変わってる』
新しいコメントが、
つい数分前にも投稿されていた。
レンの背筋が冷える。
「配信終わってるんだろ......?」
ユウトも顔を引きつらせる。
「俺、非公開にしたはずなんだけど」
確認する。
確かに設定は非公開だった。
なのに再生数だけが、
増え続けていた。
ピコン。
その瞬間、
レンのスマホが震えた。
通知。
朝倉ミナが動画に反応しました
「......は?」
意味が分からない。
動画サイトでも、
SNSでもない。
見たことない通知。
ユウトが小さく言った。
「レン、それ最近来すぎじゃね......」
すると突然。
動画が勝手に再生せれる。
ザーッーー
ノイズ。
ブレる画面。
海沿いの道路。
ユウトの笑い声。
そして。
動画の奥。
白い制服の女子が、
ゆっくり顔を上げた。
「ーーッ!?」
レンが息を呑む。
今まで髪で隠れていた顔。
その目が、
真っ直ぐカメラを見ていた。
次の瞬間、
動画の音声に、
ユウトの声とは別の声が混ざる。
『.......みつけて』
教室の空気が凍る。
ユウトが慌てて停止ボタンを押した。
画面が止まる。
でも。
停止した映像の中で、
ミナだけが少し笑っていた。
「......なんだよこれ」
誰も答えない。
蝉の声だけが、
やけに大きく聞こえた。
放課後。
レンは一人で、
昨日の動画について調べていた。
すると。
古い掲示板の書き込み見つける。
タイトル。
【朝倉ミナを見つけた奴いる?:】
投稿日は、
三年前。
レンは息を止めた。
書き込みを開く。
『深夜2時13分にオンラインになる』
『動画に映る』
『探すと向こうから来る』
指先が冷たくなる。
その時。
掲示板の一番下に、
新しいレスが追加された。
投稿日。
”たった今”。
そこのは一言だけ書かれていた。
『まだ見えてる?』
レンのスマホが震える。
画面には、
非通知着信。
そして。
通知欄に、
見覚えのある文字が浮かんでいた。
朝倉ミナが入力中です
読んでくださってありがとうございました。
今回は、
”消したはずなのに残っているもの”
をテーマにしていました。
配信アーカイブって、
なんとなく深夜に見返したくなる時があります。
でも、
もし映ってはいけないものまで残っていたら、
ちょっと怖いですよね。




