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既読がつかない夏  作者: 蒼空
夏が終わるまで

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39/40

第39話  「観測者」

第39話です。


今回は、

“本当に見ていたのは誰か”

を意識して書いていました。


見ているつもりが、

実は見られていた。


そんな感覚って少し怖いですよね。

海の向こう。


黒い水平線の上。


もう一つの巨大な影が、

ゆっくり立ち上がる。


誰も声を出せなかった。


さっきまで巨大だと思っていた顔が、

急に小さく見える。


レンの呼吸が止まる。


「あれ……何だよ」


答えは返ってこない。


ただ。


夜空そのものが立ち上がったみたいだった。


海面に浮かぶ大量のスマホ。


その全てが、

一斉に光る。


パッ――


表示された文字。


観測開始


その瞬間。


海風が止んだ。


波も止まる。


音が消える。


世界そのものが、

静止したみたいだった。


「……動いてる」


ナギが震える声を出す。


確かに。


水平線の巨大な影だけが、

ゆっくりこちらを見下ろしていた。


目はない。


顔もない。


でも。


見られていると分かる。


レンの背中を冷たい汗が流れる。


その時。


海の中央にいた巨大な顔が、

初めて怯えた。


大量の顔が歪む。


泣き叫ぶ。


怒る。


苦しむ。


そして。


『見ないで』


と呟いた。


レンは息を呑む。


今まで人を飲み込んできた存在が。


今度は。


見られる側になっていた。


ミナが小さく言う。


「……あれも管理者じゃない」


レンが振り返る。


「え?」


ミナは海の向こうを見る


青ざめたまま。


「管理者を管理してる」


誰も言葉を失う。


ブブッ。


通知。


レンのスマホ。


割れた画面。


そこへ。


新しいメッセージが届く。


送り主。


不明


内容。


『まだ見てる?』


レンの心臓が跳ねる。


最初の通知と似ている。


でも違う。


今度は。


問いかけだった。


その時。


海の底から、

本物の詩音 が叫ぶ。


『開くな!!』


レンは画面を握る。


でも。


通知は増え続ける。


『見えてる?』


『聞こえる?』


『返事して』


『そこにいる?』


まるで。


誰かが必死に話しかけているみたいだった。


ユウトが顔を上げる。


「これ……」


震える声。


「助けを求めてるんじゃないか?」


レンも同じことを思った。


最初の怪異とは違う。


敵意がない。


むしろ。


焦っているように見える。


その瞬間。


海中央の巨大な顔が、

叫んだ。


『見るなァァァァ!!』


同時に。


大量の黒い腕が伸びる。


詩音へ。


ミナへ。


レンたちへ。


そして。


水平線の巨大な影へ。


だが。


次の瞬間。


夜空に巨大な通知が現れた。


まるで。


空そのものが画面になったみたいに。


表示された文字。


権限不足


巨大な顔の動きが止まる。


ノイズ。


悲鳴。


エラー音。


海全体が揺れる。


そして。


水平線の向こうから。


初めて声が聞こえた。


男でもない。


女でもない。


子供でもない。


機械でもない。


説明できない声。


ただ。


一言だけ。


『まだ終わっていない』


その瞬間。


海の底から、

無数の光が浮かび上がった。


スマホではない。


人だった。


今まで沈んでいた人々。


何十人。


何百人。


何千人。


全員が、

ゆっくり海面へ浮かび始める。


そして。


その中心で。


詩音の手が、

ついにレンの指先へ届いた。

読んでくださってありがとうございました。


今回は、

“観測者”

をテーマにしていました。


見ている存在にも、

さらに見ている存在がいるかもしれない。


そんな発想から作った回です。


あと、

空に巨大な通知が出る演出は、

この作品の中でもかなり好きなシーンです。

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