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既読がつかない夏  作者: 蒼空
夏が終わるまで

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38/40

第三十八話  拒否

今回は、

“拒絶”

を意識して書いていました。


何かを受け入れることより、

拒絶することの方が勇気がいる時ってありますよね。

バキッ――!!


レンのスマホ画面が割れる。


YESボタンが消える。


NOだけが残る。


その瞬間。


海が吠えた。


ザァァァァァァッ!!!!


巨大な黒い顔が、

初めて怒りを露わにする。


無数の顔。


無数の声。


全部が重なって叫ぶ。


『返せ』


『返せ』


『返せ』


レンは耳を塞ぐ。


頭が割れそうだった。


だが。


海の中心。


沈んでいた

詩音 が、

確かに浮かび上がっている。


ほんの少し。


だが確実に。


「レン!」


朝倉ミナ が叫ぶ。


「今なら届く!」


レンは海を見る。


波。


闇。


ノイズ。


その向こう。


詩音が手を伸ばしていた。


必死に。


苦しそうに。


今にも沈みそうになりながら。


その時。


防波堤の上にいた

黒川ユウト が顔を上げた。


「……待て」


声が震えている。


ユウトは、

自分のスマホを見ていた。


画面。


真っ黒だったはずのディスプレイ。


そこに。


写真が映っていた。


三年前。


五人で撮った写真。


だが。


今まで見ていたものと違う。


写真の端。


小さく写る人影。


六人目。


そして。


その後ろ。


さらにもう一つの影。


ユウトが息を呑む。


「違う……」


レンが振り返る。


ユウトの顔は青ざめていた。


「六人目じゃなかった」


波の音が止まった気がした。


ナギが震える。


「え……?」


ユウトは画面を見つめたまま言う。


「ずっと勘違いしてた」


写真を拡大する。


ノイズ。


海。


人影。


その奥。


黒い影が並んでいる。


一人じゃない。


何十人も。


何百人も。


海の向こうに立っている。


ミナの顔色が変わる。


「そんな……」


レンの背筋が凍る。


六人目だと思っていたもの。


それは。


入口だった。


本当にいたのは、

その向こう側。


その瞬間。


巨大な顔が叫ぶ。


『見るな!!!』


初めてだった。


向こうが、

見られることを恐れたのは。


レンの頭に電流みたいな痛みが走る。


そして。


思い出す。


最初の通知。


見つけた


あれは。


向こうから届いたものじゃなかった。


「違う……」


レンが呟く。


「俺たちが見つけられたんじゃない」


ミナが顔を上げる。


レンは海を見る。


巨大な顔を見る。


そして言った。


「俺たちが見てしまったんだ」


その瞬間。


巨大な顔が歪む。


ノイズ。


悲鳴。


通知音。


全部が混ざる。


そして。


海の底から、

大量のスマホが浮かび上がった。


ザバァァァッ!!


夜空へ。


光の群れ。


何百台。


何千台。


その全ての画面に、

同じ文字が表示されていた。


接続エラー


接続エラー


接続エラー


接続エラー


巨大な顔が苦しそうに揺れる。


まるで。


繋がりが切れ始めているみたいだった。


その時。


詩音がさらに浮かび上がる。


胸まで。


肩まで。


あと少し。


あと少しで届く。


レンは手を伸ばした。


詩音も手を伸ばす。


あと数メートル。


届く。


そう思った瞬間。


海の奥から。


今までで一番大きな通知音が鳴った。


ブブブブブブブブブブッ!!!!


全員のスマホが光る。


表示された文字。


管理者が接続しました


そして。


海の遥か向こう。


黒い水平線の上に。


もう一つの巨大な影が、

ゆっくり立ち上がった。

読んでくださってありがとうございました。


今回は、

“拒否すること”

をテーマにしていました。


受け入れるよりも、

拒絶する方が大変なことって結構ありますよね。


あと、

敵だと思っていたものの向こうに、

さらに大きな存在がいる展開は個人的にかなり好きです。

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