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既読がつかない夏  作者: 蒼空
既読の向こう側

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35/40

第三十五話  上書き

第三十五話です。


今回は、

”上書きされる恐怖”

を意識して書いていました。


自分のアカウントなのに、

自分じゃない誰かが触ってる感じって、

かなり怖いですよね。

夜の防波堤。


海から、

大量の”誰か”が這い上がってくる。


濡れた制服。


そして。


スマホを握った手。


そして。


全部、

レンたちと同じ顔だった。


「逃げろ!!」


朝倉ミナの叫び声。


レンは反射的に、

黒川ユウトの腕を掴んだ。


でも。


ユウトの感触がおかしい。


冷たい。


濡れている。


ゆっくり顔を上げたユウトは、

黒い瞳のまま笑っていた。


「見つけた」


ゾワッーー


レンは思わず手を離す。


その瞬間。


ユウトのスマホ画面が、

強く光った。


  上書き完了


直後。


ユウトが、

海の方へ歩き出した。


ぎこちない動き。


まるで、

誰かに操作されているみたいだった。


「ユウト!!」


レンが叫ぶ。


でも。


ユウトは止まらない。


ミナが青ざめる。


「だめ、連れていかれる!」


その時。


名阿木が、

震える声で言った。


「スマホ壊して!!」


レンが振り返る。


ナギは涙を浮かべながら、

必死に叫ぶ。


「同期元を切らないと!!」


その言葉で、

レンはユウトのスマホを見る。


画面。


そこに。


”もう一人のユウト”が映っていた。


そいつが、

画面越しに笑っている。


『遅かったね』


レンは歯を食いしばる。


そして。


ユウトのスマホを、

防波堤へ叩きつけた。


ガシャアアッテ!!


画面が割れる。


同時に。


ユウトの身体が、

ガクンと止まった。


その場へ崩れ落ちる。


「ッ......!」


れ㎜が駆け寄る。


ユウトは荒い息をしながら、

ゆっくり目を開けた。


瞳が戻っている。


「......レン?」


レンの力が少し抜ける。


でも。


その瞬間。


海全体が、

大きく揺れた。


ザァァァァッーー!!


波が荒れる。


大量のづ真帆の光が、

一斉にこちらを向いた。


そして。


海の中央。


黒い水の奥から、

巨大な”顔”が浮かび上がる。


人間じゃない。


大量の顔が、

無理やり重なっている。


溺れた人。


笑う顔。


泣く顔。


ノイズ。


その中央で。


”本物の詩音”だけが、

沈み続けていた。


レンは息を呑む。


詩音が、

海の底から何か叫んでいる。


ノイズで聞こえない。


でも。


ミナだけは、

その意味が分かったみたいに顔を上げた。


「......まだ中にいる」


その瞬間。


レンのスマホへ、

動画が送られてくる。


送り主。


  詩音


再生。


暗い映像。


海の底。


沈んだスマホたち。


そして。


その奥。


黒い穴みたいな場所へ、

大量の人影が吸い込まれていた。


詩音の声が震える。


『これ、”入口”だ』


レンの背筋が凍る。


動画の中で、

カメラがゆっくり穴へ近づく。


その奥。


真っ暗な空間。


でも。


大量の通知だけが響いている。


ブブッ。


ブブッ。


ブブブブブッーー


そして。


闇の中で、

何かが目を開いた。


巨大な、

真っ黒な目。


動画が止まる。


直後。


海から、

知らない声が響いた。


『次、誰?』


その瞬間。


レンたち全員のスマホへ、

同じ通知が届く。


  新しい管理者が参加しました

読んでくださってありがとうございました。


今回は、

”上書き”

をテーマにしていました。


昔のデータが復元されるのって便利だけど、

「今の自分」が消える感じも少しありますよね。


あと、

海の奥に”入口”がある演出、

かなり好きです。


第三十五話から一日一話投稿になります。

これからもわたくし蒼空をよろしくお願いします。


申し訳ありません。投稿遅れました。

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