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既読がつかない夏  作者: 蒼空
見えない波

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32/40

第三十二話  既読

今回は、

”本物と偽物”

を意識して書いていました。


声が同じだと、

それだけで信じそうになる瞬間ありますよね。

夜の海。


防波堤。


黒い波の音。


海の中央に立つ、

”詩音の形をした何か”。


そいつは、

ゆっくり笑っていた。


でも。


レンのスマホから聞こえる声は、

違った。


『......逃げろ』


弱々しい、

本物の詩音の声。


レンは呼吸を忘れる。


「どこにいるんだよ......!」


通話の向こうで、

激しいノイズ。


ザーッーー


その奥から、

水を叩く音が聞こえる。


ザブッ。


ザブッ。


『下』


その一言で、

全員の空気が凍った。


ユウトが顔を引きつらせる。


「......は?」


『海の下』


レンはゆっくり、

黒い海を見る。


波。


暗闇。


何も見えない。



でも。


その瞬間。


水面の下で、

白い光が点いた。


ブゥゥン......


スマホ画面の光。


一つじゃない。


大量。


海の底に、

無数のスマホが沈んでいた。


全部、

光っている。


全部、

通知が鳴っている。


ナギが震える。


「......うそ」


ミナが苦しそうに呟く。


「見つけられた人たち」


レンの背筋が冷える。


その時。


海の中央の”それ”が、

ゆっくり腕を上げた。


ブブッ。


レンたち全員のスマホが震える。


通知。


  新着メッセージ 99+


送り主。


全部、

”詩音”。


ユウトが叫ぶ。


「なんなんだよこれ!!」


次の瞬間。


大量のメッセージが、

勝手に開き始める。


  『寒い』

 

  『暗い』


  『見えてる?』


  『助けて』


  『まだ沈んでる』


レンの呼吸が乱れる。


その中に。


一つだけ、

違う文章が混ざっていた。


  『そっちは誰?』


その瞬間。


海の中央の”それ”が、

カクン、と首を傾げた。


ありえない角度。


空洞みたいな目。


そして。


詩音の声で言う。


『既読ついた』


ゾワッーー


全員のスマホ画面に、

同時表示される。


  既読 6


六人。


レンたちは四人。


本物の詩音。


そして。


”もう一人”。


ミナが青ざめる。


「だめ」


その瞬間。


海面が、

大きく揺れた。


ザバァッ!!!!!!


大量の黒い手が、

海から伸びる。


スマホを握った腕。


濡れた制服。


ノイズ混じりの顔。


レンは後ずさる。


その時。


通話の向こうで、

本物の詩音が叫んだ。


『そいつ見るな!!』


直後。


海の中央の”それ”の顔が、

一気に崩れた。


ノイズ。


水。


歪んだ口。


でも。


その奥に。


知らない顔が大量に混ざっている。


男。


女。


子供。


全部、

溺れてるみたいな顔。


そして。


一番奥で。


”詩音”が沈んでいた。


レンの息が止まる。


詩音が、

海の底から手を伸ばしている。


ミナが泣きそうな声を出す。


「まだ引っ張られてる......!」


その瞬間。


レンのスマホへ、

個人通話がかかってくる。


発信者。


  不明なユーザー


勝手に通話が開く。


ザーッーー


そして。


知らない声が、

すぐ耳元で囁いた。


『次は、お前』


直後。


レンの足音を、

海の中から伸びた手が掴んだ。



読んでくださってありがとうございました。


今回は、

”既読”

をテーマにしていました。


通知って、

見た瞬間に繋がっちゃう感じありますよね。


あと、

海の底でスマホが光ってる光景、

かなり映像映えしそうで好きです。

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