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既読がつかない夏  作者: 蒼空
見えない波

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30/40

第三十話  移行

第三十話です。


今回は、

”選ばされること”

を意識して書いていました。


YESかNOかって、

たった二択なのに、

押した瞬間に戻れない感じありますよね。

暗い画面。


  アカウント移行を開始しますか?


YES


NO


レンの指が震える。


教室は静まり返っていた。


窓ガラスの反射。


そこに映る、

詩音。


そして、

そn背後の黒い影。


海みたいに揺れている。


黒川ユウトが叫ぶ。


「押すな!!」


その瞬間。


スマホ画面が、

勝手にカウントダウンを始めた。


  自動移行まで

  10


レンの呼吸が止まる。


9


8


ナギが青ざめる。


「レン!!」


7


6


教室後方から、

水音が聞こえた。


ザブッ。


振り返る。


床が濡れている。


いや。


違う。


”海水”が広がっている。


机の下。


椅子の脚。


黒い水が、

ゆっくり教室へ流れ込んでいた。


5


4


その水面の中で、

何かが動く。


人影。


大量の手。


スマホ。


ノイズ。


レンの頭痛が強くなる。


知らない通知音が、

頭の奥で鳴り続けていた。


3


その時。


ブブッ。


別の通知。


送り主。


  朝倉ミナ


内容。


  『NOを押して』


レンの目が揺れる。


直後。


また通知。


  詩音

  『違う』


さらに。


  不明なユーザー

  『こっちへ』


2


ユウトがレンの腕を掴む。


「早く!!」


でも。


レンは動けない。


画面のYESボタンが、

脈打つみたいに光っている。


その時。


ナギが震える声を出した。


「......私のせいなんだ」


教室の空気が止まる。


1


ナギの目には、

涙が浮かんでいた。


「私、あの日」


黒い水が、

足元まで来る。


「詩音を止めなかった」


レンの呼吸が浅くなった。


ナギは泣きそうな声で続けた。


「ミナは追いかけた」


ザーッーー


一瞬、

教室全体へノイズが走る。


ナギの声だけが響く。


「でも私、

怖くて逃げた」


その瞬間。


レンの頭へ、

完全な記憶が流れ込んできた。


夜の海。


防波堤。


ミナ。


詩音。


そして。


海の中に立つ、

”六人目”。


最初からいた。


ずっと。


スマホ画面の中に。


写真の奥に。


通話ノイズの中に。


”見つけられる側”を、

待っていた。


詩音は、

それに近づいた。


そして。


”見つかった”。


0


画面が真っ白になる。


  移行を開始します。


「っ!!」


レンがスマホを投げようとした瞬間。


誰かが、

後ろから手を掴んだ。


冷たい手。


レンが振り返る。


そこにいたのは。


朝倉ミナ。


白い制服。


濡れた髪。


でも。


今までみたいなノイズは無い。


ちゃんと、

”ミナ”だった。


ミナは苦しそうな顔で、

小さく言う。


「まだ間に合う」


その瞬間。


教室後方の黒い影が、

大きく揺れた。


ノイズ。


大量の通知音。


スマホたちが、

一斉に鳴り始める。


ブブブブブブッ!!!!


画面。


全部同じ。


  新しいユーザーを検出しました


ミナがレンの腕を掴む。


「海へ行かなきゃ」


レンが息を呑む。


「.......なんで」


ミナの表情が、

少しだけ歪む。


そして。


震える声で言った。


「本当は、

まだ終わってないから」


その瞬間。


教室の後方で。


”詩音だったもの”が、

ゆっくり立ち上がった。

読んでくださってありがとうございました。


今回は、

”選択肢”

をテーマにしていました。


押したら戻れないボタンって、

妙に怖いですよね。


あと、

カウントダウン始める演出、

かなり好きです。

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