第三十話 移行
第三十話です。
今回は、
”選ばされること”
を意識して書いていました。
YESかNOかって、
たった二択なのに、
押した瞬間に戻れない感じありますよね。
暗い画面。
アカウント移行を開始しますか?
YES
NO
レンの指が震える。
教室は静まり返っていた。
窓ガラスの反射。
そこに映る、
詩音。
そして、
そn背後の黒い影。
海みたいに揺れている。
黒川ユウトが叫ぶ。
「押すな!!」
その瞬間。
スマホ画面が、
勝手にカウントダウンを始めた。
自動移行まで
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レンの呼吸が止まる。
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8
ナギが青ざめる。
「レン!!」
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6
教室後方から、
水音が聞こえた。
ザブッ。
振り返る。
床が濡れている。
いや。
違う。
”海水”が広がっている。
机の下。
椅子の脚。
黒い水が、
ゆっくり教室へ流れ込んでいた。
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4
その水面の中で、
何かが動く。
人影。
大量の手。
スマホ。
ノイズ。
レンの頭痛が強くなる。
知らない通知音が、
頭の奥で鳴り続けていた。
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その時。
ブブッ。
別の通知。
送り主。
朝倉ミナ
内容。
『NOを押して』
レンの目が揺れる。
直後。
また通知。
詩音
『違う』
さらに。
不明なユーザー
『こっちへ』
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ユウトがレンの腕を掴む。
「早く!!」
でも。
レンは動けない。
画面のYESボタンが、
脈打つみたいに光っている。
その時。
ナギが震える声を出した。
「......私のせいなんだ」
教室の空気が止まる。
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ナギの目には、
涙が浮かんでいた。
「私、あの日」
黒い水が、
足元まで来る。
「詩音を止めなかった」
レンの呼吸が浅くなった。
ナギは泣きそうな声で続けた。
「ミナは追いかけた」
ザーッーー
一瞬、
教室全体へノイズが走る。
ナギの声だけが響く。
「でも私、
怖くて逃げた」
その瞬間。
レンの頭へ、
完全な記憶が流れ込んできた。
夜の海。
防波堤。
ミナ。
詩音。
そして。
海の中に立つ、
”六人目”。
最初からいた。
ずっと。
スマホ画面の中に。
写真の奥に。
通話ノイズの中に。
”見つけられる側”を、
待っていた。
詩音は、
それに近づいた。
そして。
”見つかった”。
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画面が真っ白になる。
移行を開始します。
「っ!!」
レンがスマホを投げようとした瞬間。
誰かが、
後ろから手を掴んだ。
冷たい手。
レンが振り返る。
そこにいたのは。
朝倉ミナ。
白い制服。
濡れた髪。
でも。
今までみたいなノイズは無い。
ちゃんと、
”ミナ”だった。
ミナは苦しそうな顔で、
小さく言う。
「まだ間に合う」
その瞬間。
教室後方の黒い影が、
大きく揺れた。
ノイズ。
大量の通知音。
スマホたちが、
一斉に鳴り始める。
ブブブブブブッ!!!!
画面。
全部同じ。
新しいユーザーを検出しました
ミナがレンの腕を掴む。
「海へ行かなきゃ」
レンが息を呑む。
「.......なんで」
ミナの表情が、
少しだけ歪む。
そして。
震える声で言った。
「本当は、
まだ終わってないから」
その瞬間。
教室の後方で。
”詩音だったもの”が、
ゆっくり立ち上がった。
読んでくださってありがとうございました。
今回は、
”選択肢”
をテーマにしていました。
押したら戻れないボタンって、
妙に怖いですよね。
あと、
カウントダウン始める演出、
かなり好きです。




