第三話 消えたトーク履歴
第三話です。
今回は、
”証拠は消える怖さ”
をテーマにしています。
スマホって、
記憶が残るから安心できる部分があると思うんです。
でも逆に、
そこにあったはずのものが突然消えたら。
それって、
かなり怖い。
少しずつ、
レンの存在感が崩れていきます。
カーブミラーを見つめたまま、
俺は動けなかった。
白い服。
長い髪。
街灯の影に溶けるみたいに立っていた”確か”。
でも次の瞬間には、
もう何もいなかった。
「......見間違い、だろ」
自分に言い聞かせる。
けど、
心臓の音は全然落ち着かなかった。
スマホを見る。
通話履歴。
非通知、午前一時四三分。
確かに残っている。
夢じゃない。
俺は急いで自転車を漕いだ。
向かう先は、
”ミナの家だと思ってる場所”。
十分後。
住宅街の奥。
見慣れたはずの二階建て。
だけど。
「......え?」
違和感があった。
表札。
朝倉じゃない。
知らない苗字。
古びた木の表札が、
街灯に照らされている。
俺は眉をひそめた。
「いや、でも......」
ミナはここだと言っていた。
『家古すぎて終わってるw』
って。
なのに。
ピンポンを押す。
しばらくして、
五十代くらいの女性だった。
「......どちら様?」
喉がうまく動かない。
「朝倉ミナさん、いますか」
その瞬間。
空気が変わった。
女性の顔から、
一瞬で表情が消えた。
「......その名前」
低い声。
「どこで聞いたの?」
背筋が冷える。
「クラスメートですけど......」
女性は。
俺をじっと見た。
信じられれないものをみるみたいに。
そして。
「その子は、三年前に亡くなりました」
頭が真っ白になった。
「......は?」
「事故で」
言葉が理解できない。
いや、
理解したくなかった。
だって。
昨日まで話してた。
今日もLINEした。
さっき電話だってーー
「嘘ですよね?」
思わず声が大きくなる。
女性は何も言わず、
スマホを取り出した。
ニュース記事。
『女子高校生 行方不明から一週間 遺体で発見』
その下。
笑っているミナの写真。
見覚えのある笑顔。
見覚えのある制服。
日付は、
三年前。
「そんな......」
足元がぐらつく。
女性は小さく言った。
「もう来ないで」
ドアが閉まる。
取り残される。
夜の静けさだけが残った。
気づけば、
俺は近くの公園にいた。
ブランコに座り、
震える手でスマホを開く。
LINE。
朝倉ミナ。
トーク画面を押す。
そして。
「......え?」
息が止まる。
全部、
消えていた。
写真。
動画。
通話履歴。
やり取り。
何もない。
空っぽ。
たった一つを除いて。
『助けて』
それだけが残っていた。
「なんだよ、これ......」
指が震える。
ありえない。
さっきまであった。
海の動画も、
コンビニの写真も、
全部。
その時。
ピコン。
通知音。
俺は肩を跳ねさせた。
動画を見る。
送り主不明。
添付ファイル:video_0827
恐る恐る、
再生を押す。
ノイズ。
暗い映像。
荒い息。
誰かが走っている。
ブレる画面。
夜道。
街灯。
そして。
急に映像が止まる。
そこに映っていたのはーー
「......俺?」
制服姿の、
俺だった。
画面の中の俺が、
ゆっくりこちらを見る。
そして口を動かす。
『次は、お前』
ブツッ。
動画終了。
同時に。
背後から、
スマホの通知音が鳴った。
俺のじゃない。
すぐ後ろ。
耳元みたいな距離。
ピコン。
ピコン。
ゆっくり振り向く。
誰もいない。
だけど、
ブランクが一つだけ揺れていた。
まるで、
さっきまで誰かが座っていたみたいに。
第三話を読んでくださってありがとうございました。
ここでようやく、
”朝倉ミナは三年前に死亡している”
という情報が出ました。
ただ、
この時点ではまだ、
「本当に幽霊なのか」は確定していません。
個人的に今回書きたかったのは、
”データが消える恐怖”です。
スマホって、
今の時代は記憶そのものに近いので、
そこが壊れると一気に現実感がなくなる気がします。
あと、
最後の動画。
かなり重要です。
細かく見ると違和感がいくつかあります。




