第二話 助けて、の四文字
第二話です。
今回は、
「ただの青春作品だと思っていた空気が崩れ始める回」になっています。
深夜の通知って、
昼より何倍も怖く感じませんか。
特に、
短いメッセージほど。
今回から少しずつ、
レンの”違和感”が現実になっていきます。
夜風がぬくかった。
窓を開けたまま、俺ーー藤崎レンはベッドに寝転がってスマホを見ていた。
午前一時十二分。
クラスLINEはまだ動いている。
「明日海いくやつー?」
「課題終わってねぇ」
「ミナ起きてる?」
画面をスクロールしながら、俺は少しだけ笑った。
数か月前まで、
こういう通知は全部”別世界”だった。
でも今は違う。
ミナがいる。
朝倉ミナ。
クラスの中心にいるようなやつなのに、
なぜか最近ずっと俺に絡んでくる。
その帰り際。
「レンってさ」
ミナは夜道を歩きながら言った。
「なんか、”消えそう”だよね」
「......は?」
「悪口じゃないって。なんていうか」
街灯の光が、
ミナの横顔をぼんやり照らす。
「急にいなくなりそう」
「それミナの方じゃん」
「えー?」
ミナは笑った。
でもその時、
ほんの一瞬だけ。
表情が消えた気がした。
まるで、
何かを思い出したみたいに。
ピコン。
通知音。
現実に引き戻される。
画面を見る。
朝倉ミナ。
メッセージ。
俺は何気なく開いた。
『助けて』
短かった。
なのに。
背筋が妙に冷たくなる。
「......なんだよこれ」
すぐ通話をかける。
コール音。
一回。
二回。
三回。
出ない。
「おい、ミナ?」
LINE。
既読がつかない。
電話を切って、
もう一度かける。
出ない。
嫌な感じがした。
さっきまで普通だった。
コンビニで笑ってた。
なのに。
俺は立ち上がる。
パーカーを掴み、
財布をポケットに突っ込んだ。
限界を飛び出す。
夜の空気が、
昼よりずっと冷たく感じた。
住宅街を自転車で走る。
タイヤの音だけがやけに響く。
街灯。
無人の公園。
閉まった店。
夏なのに、
妙に静かだった。
信号待ちで、
もう一度スマホを見る。
未読。
『助けて』
打ち間違い?
誰かの悪ふざけ?
でも、
ミナがそんなことするか?
考えた瞬間。
スマホが震えた。
「っ!」
着信。
非通知。
一瞬迷って、
俺は通知を取る。
「......もしもし?」
ノイズ。
ザーッ......。
遠くで何か音がする。
風?
違う。
誰かの呼吸。
『......れ、ん......』
小さい声。
ミナだった。
「ミナ!?どこいる!?」
『うしろ......』
その瞬間。
ブツッ。
通知が切れた。
「は?」
心臓が跳ねる。
ゆっくり振り向く。
誰もいない。
暗い道。
自販機。
揺れる電線。
だけど。
カーブミラーの奥。
一瞬だけ。
白い服の”誰か”が見えた気がした。
読んでくださってありがとうございました。
非通知、
謎の声、
カーブミラーの人影。
ホラーとしては定番っぽい要素ですが、
全部ちゃんと意味があります。
そして、
ミナの「消えそう」という言葉。
ここはかなり重要です。
この作品は、
読み返すと印象が変わるタイプを目指しているので、
細かいセリフも覚えておくと後半で繋がるかもしれません。




