第一話 既読がつかない夏
はじめまして。
『既読のつかない夏』をみんでくださってありがとうございます。
この作品は、
”もし、死んだはずのクラスメイトからLINEが届いたら?”
というところから始まった、青春×SNSホラーです。
夏の夜、
通知音、
既読、
何気ないメッセージ。
普段みんなが触ってるスマホの中に、
少しだけ”気味の悪さ”を混ぜた作品にしたいと思っています。
ゆっくり不穏になっていくタイプなので、ぜひ深夜に読んでください。
高校二年の夏休み。
クラスLINEは、毎日うるさいくらい通知が鳴っていた。
花火。
海。
祭り。
誰かの恋愛。
その中心には、いつも朝倉ミナがいた。
「ねぇ次どこ行く?」
「てか動画回して!」
「それ絶対バズるって!」
ミナは、誰とでも話せるタイプだった。
俺ーー藤崎レンとは真逆。
教室の隅でイヤホンをつけているだけの、空気みたいな人間。
…….だったはずなのに。
「レンってさ、意外と面白いよね」
そう言ってから、ミナは毎日話しかけてくれるようになった。
きっかけなんて覚えてない。
でも気づけば、
夜中までLINEして、
コンビニでアイス食って、
どうでもいい動画送り合ってた。
人生で初めて、
「青春っぽい」って思った。
八月十七日。
その日、ミナからメッセージが来た。
”助けて”
たったこの四文字。
すぐ電話した。
出ない。
LINE。
既読つかない。
インスタ。
更新なし。
嫌な予感がした。
俺は自転車を飛ばして、ミナの家に向かった。
でも。
「.......え?」
家の表札が、違った。
朝倉じゃない。
古びた苗字。
出てきたおばさんは、俺を見るなり怪訝な顔をした。
「どちら様ですか?」
「朝倉ミナさん......いますよね?」
その瞬間。
おばさんの顔色が変わった。
「......その名前、どこで聞いたの?」
冷たい声だった。
「え?」
「その子、三年前に亡くなってます」
意味が分からなかった。
頭が真っ白になった。
だって昨日まで話してた。
花火の動画だって送られてきた。
通話もした。
笑ってた。
なのに。
「嘘、ですよね......?」
すると、おばさんはスマホを見せてきた。
ニュース記事。
「高校一年生・朝倉美奈さん行方不明の末、遺体で発見」
日付は三年前。
写真はーー
間違いなく、ミナだった。
その夜。
震える手で、
俺はミナとのトーク画面を開いた。
全部消えていた。
写真も、
通話履歴も、
メッセージも。
最後の”助けて”だけを残して。
心臓が嫌な音を立てる。
その時。
通知が鳴った。
非通知。
恐る恐る開く。
そこには動画が届いていた。
再生。
ノイズ。
暗い夜道。
ブレた画面。
荒い息。
誰かが走っている。
そして最後、
街灯の下でカメラが止まった。
映っていたのはーー
今の俺だった。
制服も。
表情も。
全部。
画面の中の俺が、
ゆっくり口を動かす。
『次は、お前だ』
そこで動画は切れた。
同時に。
部屋の外から、
スマホの通知音が聞こえた。
俺のじゃない。
廊下。
ゆっくり近づいてくる。
ピコン。
ピコン。
ピコン。
そして。
ドアの向こうで、
ミナの声がした。
「......既読、つけてよ」
第一話を読んでくださってありがとうございました。
まだ序盤ですが、
この時点でいくつか違和感を入れてあります。
・なぜミナはレンに近づいたのか
・”助けて”は誰かに向けたものなのか
・ミナは本当に存在しているのか
この辺りが後半につながっていきます。
次回から少しずつ、
”普通じゃない部分”が見えてきます。




