第二十七話 六人目
第二十七話です。
今回は、
”知らない誰かが最初からいた”
感覚を意識して書いていました。
写真って、
後から見返すと当時きづかなかったもの
見つけたりしますよね。
夜の海。
写真の奥。
暗い波の中に、
”六人目”が立っていた。
レンは息を止めた。
画面を拡大する。
ノイズ。
ブレた輪郭。
人影。
でも。
確かにいる。
海の中から、
こちらを見ている。
黒川ユウト が掠れた声を漏らした。
「......なんだよ、これ」
佐伯ナギ の顔色が変わる。
「違う」
レンが顔を上げる。
ナギは震える指で、
写真の海を指差した。
「これ......最初からいた」
教室が静まり返る。
その瞬間。
ピコン。
グループ通知。
詩音
『見えてる?』
直後。
また通知。
朝倉ミナ
『だから言ったのに』
レンの背筋が冷える。
”だから”。
つまり。
ミナは、
三年前から気づいていた。
レンはもう一度、
録音データを再生した。
ザーッーー
波の音。
ノイズ。
五人の声。
そして。
詩音の最後の言葉。
『......誰だよ、お前』
その直後。
今まで聞こえなかった音が、
小さく混じっていることに気づく。
ザブッ。
水音。
誰かが、
海から上がるみたいな音。
レンの喉が詰まる。
さらに。
ノイズの奥。
微かな声。
『やっと』
知らない声だった。
低く。
濡れたみたいな声。
『見つけた』
録音が終わる。
教室の空気が重い。
ユウトが小さく言う。
「......詩音じゃない」
誰も否定できなかった。
その夜。
レンは自室で、
三年前の写真を見返していた。
海。
祭り。
コンビニ。
通話のスクショ。
五人の記録。
でも。
全部に共通しているものがあった。
”背景”。
窓。
暗い水面。
ガラス。
反射。
そこに、
毎回ぼんやり何かが映っている。
レンの呼吸が浅くなる。
「......なんなんだよ」
その時。
スマホが震えた。
着信。
詩音
レンは数秒迷ってから、
通話へ出る。
ザーッーー
激しいノイズ。
でも。
今までと違った。
はっきり、
息遣いが聞こえる。
『......レン』
詩音の声。
低く。
少し掠れている。
レンは言葉を失う。
『まだ、あいつ見えてる?』
「あいつ?」
沈黙。
ノイズ。
その奥で、
水音が響く。
ザブッ。
詩音が小さく言う。
『海、来るな』
レンの背筋が凍る。
『あれ、ミナじゃない』
ブツッーー
通話が切れた。
静かな部屋。
レンの呼吸だけが響く。
その瞬間。
スマホ画面が、
勝手にフロントガラスへ切り替わった。
暗い部屋。
レン。
その後ろ。
カーテンの隙間。
白い制服。
でも。
顔が違った。
ミナじゃない。
黒く濡れた髪。
輪郭の崩れた顔。
そして。
ゆっくり口が動く。
『見つけた』
レンが振り返る。
誰もいない。
でも。
スマホ画面の中だけで、
”それ”は笑っていた。
翌日。
レンは寝不足のまま学校へ向かっていた。
教室へ入る。
すると。
後方の席に、
誰か座っていた。
一瞬、
心臓が止まりそうになる。
でも。
それは人だった。
男子生徒。
黒髪。
眠そうな目。
制服。
レンは固まる。
男子生徒は、
ゆっくり顔を上げた。
そして。
少し困ったみたいに笑う。
「......誰だっけ、俺」
教室の時計が、
午前二時三分で止まっていた。
読んでくださってありがとうございました。
今回は、
”背景にあるもの”
を意識して書いていました。
昔の写真って、
人より背景見始めると急に怖くなる時ありますよね。
あと、
止まったデジタル時計、
かなり不気味で好きです。




