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既読がつかない夏  作者: 蒼空
見えない波

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25/40

第二十五話  復元

第二十五話です。


今回は、

”思い出してしまったあと”

を意識して書いていました。


忘れていたものって、

戻ってきた瞬間が一番怖いですよね。

既読”5”。


その数字を見た瞬間。


レンの背筋を、

冷たいものが走った。


教室には、

確かに四人しかいない。


なのに。


スマホは、

”五人”を認識していた。


静かな夕方。


誰もいない後方席。


でも。


ギィ......。


そこから、

微かに椅子の軋む音だけ聞こえる。


黒川ユウトが掠れた声を出した。


「......マジでいるのか」


レンは答えられない。


スマホ画面には、

個人メッセージが残っている。


  詩音

  『やっと思い出した』


その文字を見ているだけで、

頭の奥が痛んだ。


”詩音”。


口にした瞬間から、

曖昧だった記憶が形を持ち始めてる。



ザーッーー


突然、

教室のモニターが再び点灯した。


ノイズ。


その奥から、

動画が再生される。


三年前。


中学三年の夏。


海沿いの道。


夕焼け。


五人の笑い声。


今までノイズだった人物が、

はっきり映っていた。


詩音。


黒髪。


少し眠そうな目。


制服のポケットへ手を入れたまま、

めんどくさそうに歩いている。


でも。


ちゃんと笑っていた。


レンは息を呑む。


「......いた」


確かに。


最初から、

ここにいた。


ユウトも固まっている。


「なんで忘れてたんだよ......」


映像の中で、

ミナがカメラを向ける。


『詩音ー』


詩音が嫌そうな顔をする。


『名前呼ぶなって』


『なんで?』


『タグ付けされるだろ』


笑い声。


その会話だけは、

妙に鮮明だった。


ナギの目に、

涙が浮かぶ。


「......ごめん」


小さな声。


映像は続く。


夜の海。


防波堤。


風の音。


五人の姿。


でも。

ここから空気が変わる。


ミナが、

暗い海を見つめながら言う。


『......いた』


レンの心臓が跳ねる。


その言い方。


三年前から、

同じだった。


詩音が眉をひそめる。


『またそれ?』


『だって見えてる』


ミナは、

スマホ画面を見せる。


そこには。


”知らないアカウント”からの通知。


  『見つけた』


レンの呼吸が止まる。


ユウトも青ざめる。


「......最初からだったのか」


映像の中で、

詩音が海へ近づいていく。


ミナが止める。


『待って』


詩音は振り返る。


その瞬間。


動画へ、

激しいノイズが走った。


ザーッ!!!!


画面が乱れる。


悲鳴。


風。


落下音。


そして。


ミナの叫び声。


『詩音!!』


ブツッーー


映像が止まる。


教室が静まり返る。


誰も喋れない。


その時。


レンのスマホへ、

新しいメッセージが届く。


送り主。


  詩音


内容。


  『俺、落ちてない』


空気が凍る。


ユウトが顔を引きつらせる。


「......は?」


その直後。


またメッセージ。


  『消された』


レンの呼吸が浅くなる。


さらに続く。


  『ミナは見てた』


ナギが震え始める。


「......違う」


その時。


教室後方から、

足音が聞こえた。


コツ。


コツ。


ゆっくり近づいてくる。


レンたちは、

だれも振り返れない。


でも。


スマホのフロントカメラが、

勝手に起動した。


画面に映る、

四人の教室。


そして。


レンたちの後ろに。


男子制服姿の誰かが、

立っていた。


詩音。


今までで一番、

鮮明だった。


その顔が。


怒っているようにも、

泣いているようにも見えた。

読んでくださってありがとうございました。


今回は、

”思い出したあと”

の空気を意識していました。


忘れた人を思い出した瞬間って、

懐かしいより先に、

変な感覚になる時ありますよね。


あと、

昔の動画の何気ない会話、

妙にリアルで好きです。

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