第二十二話 削除済み
第二十二話です。
今回は、
”消せれた記憶”
を意識して書いていました。
昔のデータって、
残ってることも怖いですけど、
”無くなってる”方が怖い時ありますよね。
レンは反射的に、
スマホを伏せた。
呼吸が浅い。
暗い部屋。
カーテンの隙間。
でも。
もう後ろを確認する勇気が出なかった。
ブブッ。
スマホがまた震える。
不明なユーザー
『思い出した?』
レンは震える指で、
画面を開く。
その瞬間。
トーク画面が勝手にスクロールし始めた。
高速で流れていく、
大量のメッセージ。
三年前の日付。
知らない会話。
知らない写真。
でも。
全部、
自分たちのアカウントだった。
「......なんだよこれ」
レンの背筋が冷える。
そこには、
五人で会話しているグループチャットが残っていた。
参加メンバー。
レン。
黒川ユウト。
佐伯ナギ。
朝倉ミナ。
そして。
削除済みユーザー
レンは息を止める。
送信履歴は大量に残っているのに、
名前だけ消えていた。
『海行こーぜ』
『花火買った?』
『また遅刻してる』
普通の会話。
本当に、
ただの夏休みだった。
その時。
画面が止まる。
最後のメッセージ。
送信者。
削除済みユーザー
内容。
『見つけた』
レンは心臓が大きく跳ねる。
その直後。
画面全体にノイズが走った。
ザーッーー
新しいメッセージが表示される。
このユーザーは存在しません
でも。
数秒後。
その文章が、
ゆっくり書き換わる。
このユーザーは消去されました。
「......消去?」
レンが呟いた。
ブブブッ!!
スマホが激しく震えた。
着信。
発信者。
削除済みユーザー
レンは固まる。
否定しようとする。
でも。
指が動かない。
勝手に通話が接続された。
ザーッーー
荒いノイズ。
その奥で。
『......れん』
ミナの声で。
でも。
すぐ後ろから、
別の声が重なる。
『思い出して』
知らない声。
低い声。
掠れた声。
その瞬間。
レンの頭に、
一気に映像が流れ込んできた。
夏祭り。
夜の海。
五人の笑い声。
そして。
”誰かが海へ落ちる音”。
「っ......!!」
レンは頭を押さえる。
息ができない。
その時。
通話の向こうで、
誰かが笑った。
ミナじゃない。
知らない誰か。
『やっと見えた』
ブツッーー
通話が切れる。
レンは荒い息のまま、
スマホを見つめた。
画面には、
新しい写真通知。
開く。
夜の海。
防波堤。
そして。
五人並んだ後ろ姿。
今までノイズだった人物が、
少しだけ鮮明になっていた。
短い髪。
男子制服。
でも。
顔だけは、
まだ見えない。
その写真の下に、
小さな文字が表示される。
この写真の一部削除されています
翌日。
教室。
レンは昨夜の記録を、
黒川ユウトと
佐伯ナギに見せていた。
ユウトが青ざめる。
「......削除済みユーザー?」
ナギだけが、
静かに固まっていた。
「佐伯?」
ナギはゆっくり口を開く。
「......思い出した」
教室の空気が止まる。
「五人目」
ナギの声が震える。
「私たちの同級生だった」
レンの呼吸が止まる。
「でも」
ナギは恐怖みたいな目で、
スマホを見つめた。
「名前が思い出せない」
その瞬間。
教室の後ろのテレビモニターが、
突然ノイズ混じりに点灯した。
ザーッーー
映し出されたのは。
三年前の夏祭りの映像。
笑っている五人。
レン。
ユウト。
ナギ。
ミナ。
そして。
最後の一人だけ、
顔が黒く塗り潰されていた。
映像の最後。
ノイズの奥から、
低い声が聞こえる。
『なんで消したの?』
直後。
画面が真っ黒に落ちた。
読んでくださってありがとうございました。
今回は、
”削除された記録”
をテーマにしていました。
昔のデータって、
消したはずなのに消えてたりしますよね。
あと、
「削除されたユーザー」って表示、
ちょっと不気味で結構好きです。




