第二十一話 思い出せない顔
第二十一話です。
今回は、
”思い出せない記憶”
を意識して書いていました。
忘れているだけなのか、
最初から無かったのか、
分からなくなる瞬間って少し怖いですよね。
「っ、走れ!!」
黒川ユウトの声で、
レンたちは旧校舎を飛び出した。
暗い廊下。
夕暮れの赤い光。
背後から、
微かな笑い声が追いかけてくる。
ギィ......。
どこかで椅子が軋む音。
レンは振り返れなかった。
振り返った瞬間、
”何か”を見る気がした。
階段を駆け下りる。
息が苦しい。
その時。
ブブッ。
スマホが震える。
不明なユーザーが通話を開始しました。
「......っ!」
レンは反射的に電源を切ろうとする。
でも。
画面が閉じない。
ザーッーー
スピーカーから、
ノイズが流れ続ける。
その奥で。
『......なんで』
小さな声。
ミナじゃない。
知らない声だった。
レンの足が止まりそうになる。
『忘れたの?』
その瞬間。
頭の奥に、
何かが引っかかった。
夕焼け。
五人分の影。
海沿い。
笑い声。
でも。
一人だけ、
顔が思い出せない。
校舎を出た頃には、
空はもう暗くなり始めていた。
三人とも息を切らしながら呟く。
「......いた」
レンが顔を上げる。
佐伯ナギの目は、
まだ恐怖で揺れていた。
「後ろの席」
「見えたのか?」
ナギはゆっくり頷く。
「でも、顔だけ見えなかった」
ユウトが低い声を出す。
「なんなんだよそれ」
ナギは震える指で、
スマホ画面を見せた。
そこには、
さっき撮られた写真。
後半席に座る黒い影。
でも。
よく見ると。
輪郭が、
少しずつ変わっていた。
「......え」
レンが目を逸らす。
ノイズみたいだった顔が、
少しだけ人間に近づいている。
目。
口。
髪。
まるで。
”思い出させるたび”
形ができていくみたいに。
ユウトが顔を青ざめさせる。
「やめろよ......」
その瞬間。
写真が更新される。
黒い影の顔。
そこに。
レンによく似た目元が、
一瞬だけ浮かんだ。
「っ!?」
レンの呼吸には、
またノイズへ戻っていた。
夜。
レンは自室で、
昔の写真ファルダを漁っていた。
三年前の夏。
海。
祭り。
コンビニ。
どの写真にも、
ミナたちは映っている。
でも。
奇妙な違和感があった。
写真によって、
人数が違う。
四人の時。
五人の時。
そして。
”切り取られた跡”みたいな写真。
まるで。
最初から誰かが消されている。
レンは息を呑む。
その時。
一枚の写真で、
指が塗り潰されていた。
その横に、
ミナが笑って立っている。
レンは画面を拡大する。
すると。
写真の下部に、
小さな文字が浮かび上がった。
タグ付けされたユーザー:1人
その瞬間。
スマホが震える。
通知。
あなたが写真に追加されました
レンの背筋が凍る。
ゆっくり通知を開く。
だぐ付けれた名前。
不明なユーザー
その直後。
画面が切り替わる。
フロントカメラ。
黒い部屋。
そこに映るレン。
......の後ろ。
カーテンの隙間から、
白い制服が見えていた。
読んでくださってありがとうございました。
今回は、
”思い出せない感じ”
を意識していました。
昔の写真を見返してると、
「これ誰が撮ったんだっけ」ってなる時ありますよね。
あと、
夜にフロントカメラ開くの、
ちょっと怖いです。




