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既読がつかない夏  作者: 蒼空
MINA archive

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20/40

第二十話  五人目

第二十話です。


今回は、

”見えてしまう瞬間”

を意識して書いていました。


暗い場所って、

実際に何かいるかより、

「見えた気がする」の方が怖かったりしますよね。

停電した旧校舎は、

異様な静けさに包まれていた。


窓の外の夕焼けだけが、

薄暗い教室を赤く染めている。


レンは息を殺したまま、

スマホ画面を見つめていた。


  未送信のメッセージがあります


送り主。


  朝倉ミナ


指が動かない。


でも。


開かなければいけない気がした。


レンは震える指で、

通知をタップする。


画面を開く。


真っ黒なトーク画面。


その中央に、

一つだけメッセージが表示されていた。


  『あと一つ』


「......っ」


ユウトが小さく息を呑む。


黒川ユウトのスマホにも、

同じメッセージが届いていた。


その隣で、

佐伯ナギだけが画面を見ていなかった。


俯いたまま、

震えている。


「佐伯」


レンが声をかける。


ナギはゆっくり口を開いた。


「......あの日」


小さい声。


「私たち、四人で帰る約束してた」


レンの背筋が冷える。


「四人?」


ナギは俯く。


「私と、ミナと、レンと......」


言葉が止まる。


ユウトが眉をひそめる。


「......あと誰だよ」


ナギの顔が青ざめる。


「思い出せない」


静寂。


窓の外で、

風が鳴っている。


その瞬間。


教室後方から、

椅子が軋む音がした。


ギィ......。


三人同時に振り返る。


誰もいない。


でも。


一番後ろの席だけ、

ゆっくり揺れていた。


ユウトが掠れた声を出す。


「......今、誰か座ってたろ」


返事はない。


その時。


カシャ。


またシャッター音。


レンのスマホへ、

新しい写真通知が届く。


開く。


暗い教室。


立ち尽くす三人。


そして。


後方の席に、

”誰か”が座っていた。


黒く潰れた人影。


顔だけ、

ノイズみたいに歪んでいる。


その写真を見た瞬間。


頭の奥がズキっと痛んだ。


知らないはずなのに。


見覚えがある。


レンは反射的に頭を押さえる。


その時。


ノイズ混じりの声が、

教室奥から聞こえた。


『......やっと』


三人とも固まる。


『見つけた』


ミナの声。


でも。


その後ろに、

別の声が混ざっていた。


低く。


聞き取れない。


まるで、

二人分の音声が重なっているみたいだった。


ナギが後ずさる。


「......違う」


「え?」


「ミナだけじゃない」


その瞬間。


教室の黒板へ、

白いも維持が浮かび始めた。


ギギギ......。


見えないチョークで、

何かが書かれていく。


  ”まだ思い出してない”


レンの喉が詰まる。


さらに続く。


  ”五人目を”


ユウトが震えた声を漏らす。


「......誰なんだよ」


その時。


レンのスマホ画面が、

突然切り替わった。


ビデオ通話。


発信者。


  不明なユーザー


勝手に接続される。


ザーッーー


ノイズ。


暗い映像。


しばらくして、

ゆっくり画面が明るくなる。


映っていたのは。


”今いる教室”だった。


でも。



カメラ位置がおかしい。


教室後方つまり。


誰かが、

三人を撮っている。


レンの呼吸が止まる。


画面の中で。


レンたち三人の後ろに、

白い制服姿が立っていた。


ミナ。


そしてその隣に。


顔の中の”レン”が、

ゆっくり振り返った。


現実のレンは、

まだ振り返っていない。


なのに。


映像の中の自分だけが、

こちらを見ていた。


ブツッーー


通話が切れる。


同時に。


教室後方から、

誰かの笑い声が聞こえた。


読んでくださってありがとうございました。


今回は、

”後ろにいる感じ”

を強めに書いていました。


誰かに見られてる気がして振り返る時って、

何もいない方が逆に怖かったりしますよね。


20話まで来たので、

少しずつ違和感の正体も見え始めています。

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