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既読がつかない夏  作者: 蒼空
夏休み前線

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15/40

第十五話  「入力中」

第十五話です。


今回は少し、

”返信が来る怖さ”

を意識して書いていました。


既読って安心する時もあるんですけど、

相手によっては逆に怖いですよね。

「......お前、それ何件来てるんだよ」


昼休み。


レンは、

佐伯ナギのスマホ画面を見て息を呑んだ。


通知件数。


99+。


そのほとんどが、

同じ名前。


  朝倉ミナ


教室の蝉の声が、

やけに遠く聞こえる。


黒川ユウトが顔をしかめた。


「いやもうブロックしろよ」


ナギは小さく首を振る。


「......できなかった」


「は?」


「昨日、一回やった」


レンとユウトが黙る。


ナギは視線を落としたまま続けた。


「でえも、気づいたら戻ってた」


空気が冷える。


「しかも」


ナギの指が震える。


「既読ついてた」


ユウトが思わず声を上げた。


「誰が読んだんだよ......」


返事はなかった。


その時。


ピコン。


教室の中で、

ほぼ同時に通知が鳴る。


レン。


ユウト。


ナギ。


三人全員だった。


誰も動かない。


嫌な沈黙。


レンはゆっくりスマホを見る。


新着メッセージ。


送り主。


  朝倉ミナ


内容は、

全員同じだった。


  『今どこ?』


ユウトが乾いた笑いを漏らす。


「いや無理無理無理」


ナギは通知を開かない。


レンも指が止まる。


その時。


教室後ろの席から、

女子の声が聞こえた。


「......え?」


三人が振り返る。


クラスメイトの女子が、

青ざめた顔でスマホを見ていた。


その画面にも。


  朝倉ミナ


レンの背筋が冷える。


「......増えてる」


ナギが小さく呟く。


その瞬間。


ピコン。


また通知。


  『見えてるよ』


レンは反射的に窓の外を見る。


グラウンド。


夏空。


部活帰りの生徒。


その中に。


白い服姿が、

一瞬だけ見えた気がした。


「っ......!」


瞬きをする。


もう誰もいない。



放課後。


三人はファーストフード店に逃げ込むように入って

いた。


冷房の風。


周囲の話し声。


少しだけ安心する。


ユウトが机に突っ伏す。


「もうスマホ捨てたい」


「それで終わると思う?」


ナギが静かに返す。


誰も否定できない。


レンはスマホを裏返した。


でも。


振動だけは止まらない。


ブツッ。


ブツッ。


ブツッ。


一定のリズム。


ユウトが顔を引きつらせる。


「......見ろよ」


「嫌だ」


「俺も嫌だわ」


その時。


ナギがゆっくり口を開いた。


「......ミナ、昔こういう感じだった」


レンが顔を上げる。



「え?」


ナギは窓の外を見たまま続けた。


「返信、すごく早かった」


少しだけ笑う。


「どうでもいい内容でも送ってきてた」


レンは黙る。


ユウトも何も言わない。


「だから最初、ちょっとだけ嬉しかった」


その言葉が、

妙に苦しかった。


ナギのスマホ画面を見る。


そこには。


  朝倉ミナが入力中です。


その表示が、

ずっと消えない。


まるで。


”何かを送り続けている”みたいに。


数秒後。


メッセージが届く。


  『ねぇ』


  『まだ覚えてる?』


ナギの顔色が変わる。


レンは気づく。


ナギだけ、

知っている。


”ミナが消える前”

のことを。



夜。


レンは自室で、

ナギの言葉を思い返していた。


『まだ覚えてる?』


あれは、

誰に向けた言葉だったのか。


その時。


スマホ画面が、

勝手に点灯した。


真っ黒な部屋。


白い光。


表示されたのは、

通話画面。


  朝倉ミナ


レンは息を止める。


でも。


いつもと違った。


通話時間が、

既に表示されていた。


  02:13:08


まるで。


最初から、

”繋がっていた”みたいに。


その瞬間。


イヤホンから、

小さな呼吸音が聞こえた。


読んでくださってありがとうございました。


今回は、

”入力中”の表示をテーマにしていました。


相手が何を送ろうとしてるのか分からない

時間って、

短いのに妙に長く感じますよね。


あと、

静かな店内でスマホだけ震えてろ時の空気、

結構好きです。


あと「既読がつかない夏」は、

今日から一日二話、夜19時と23時30分の投稿になります。

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