第十三話 ログ
第十三話です。
今回は少し、
”残っている記憶”
について触れてみました。
消したつもりでも、
意外とどこかに残ってたりしますよね。
「......共有者、”朝倉ミナ”?」
翌日。
レンが教室で、
昨夜のアルバム画面を見せていた。
黒川ユウトが頭を抱える。
「もう嫌なんだけどこの通知」
佐伯ナギは、
静かにスマホ画面を見つめていた。
アルバム内。
MINA
その中に張っている四枚の写真。
どれも、
レンたちが撮った覚えのないものだった。
「これ、開いたあとどうなった?」
ナギが聞く。
「いや......普通に閉じた」
「保存は?」
「してない」
場ぎは少し黙ったあと、
小さく言った。
「ならまだいいかも」
「何がだよ」
返事はなかった。
昼休みが終わった頃。
ユウトが突然、
低い声を出した。
「......おい」
その表情を見て、
レンは嫌な予感がした。
ユウトのスマホ画面。
そこには、
動画アプリの通知。
おすすめ:MINA archive
「は?」
ユウトが震えた声で言う。
「こんなアカウント知らねぇ」
タップする。
開かれたプロフィール。
アイコンは真っ黒。
投稿数。
213本。
フォロワー数。
0.
でも。
動画のサムネイルには、
見覚えのある景色が並んでいた。
海。
学校。
夜道。
そして。
レンたちの後ろ姿。
「......なんで」
ユウトが、
ゆっくり動画を再生する。
ザーッーー
ノイズ。
映像が始まる。
そこに映っていたのは、
昨日のレンたちだった。
海沿いを歩く三人。
アイスを食べながら笑っている。
でも。
撮影位置がおかしい。
かなり近い。
まるで。
”すぐ後ろ”から撮っているみたいだった。
「......これ誰が撮ってんだよ」
動画の中で、
ユウトが笑っている。
レンはその映像を見ながら、
妙な違和感を覚えた。
視線。
ずっと、
撮影者へ向いている気がした。
その瞬間。
動画のレンが、
急に立ち止まった。
「え?」
現実のレンも固まる。
動画の中の自分が、
ゆっくり振り返った。
カメラを見る。
ノイズ。
ブレる映像。
そして。
『......そこにいるんだろ』
動画の中のレンが、
そう呟いた。
ユウトが悲鳴みたいな声を上げ、
動画を止めた。
教室が静まり返る。
誰も喋らない。
レンの心臓だけが、
異常なくらい速かった。
「......今の」
ユウトの顔色は真っ白だった。
「レン、言ったか?」
「言ってない」
ナギが小さく呟く。
「......ズレ始めてる」
「何が」
「記憶」
その言葉の意味を聞く前に。
ピコン。
また通知。
今度は、
レンのスマホだった。
新しいログインがありました
場所。
不明
端末。
MINA
背筋が凍る。
その時。
教室後方の誰かが、
小さく言った。
「......またいる」
レンたちは同時に振り返る。
窓際の席。
女子生徒が、
青ざめた顔でスマホを落としていた。
その画面には、
真っ黒な通話画面が映っている。
そして。
通話相手の名前だけが、
白く表示されていた。
朝倉ミナ
放課後。
レンは一人で、
例の”MINA archive"を調べていた。
でも。
検索しても、
アカウントは出てこない。
URLからしか飛べない。
投稿日時もバラバラ。
三年前の動画。
昨日の動画。
数分前の動画。
全部混ざっていた。
その中の一本を開く。
タイトル。
「未送信」
再生。
暗い画面。
ノイズ。
しばらくして、
小さな声が聞こえた。
『......ねぇ』
レンの呼吸が止まる。
『まだ見えてる?』
ミナの声だった。
その瞬間。
動画が停止する。
画面中央に、
新しいメッセージが表示された。
視聴者が接続しました
そして。
動画の再生バーが、
勝手に動き始めた。
読んでくださってありがとうございました。
今回は、
”記憶が残り続ける感じ”
を意識してみました。
動画サイトとかSNSって、
昔の投稿を急に見返したくなる時ありますよね。
でも、
自分の知らない記憶が残っていたら、
かなり怖いなと思います。




