第十二話 写り込む
第十二話です。
今回は、
”写ってしまうもの”
をテーマに書いてみました。
夏の写真って、
あとから見返すと楽しいはずなのに、
たまに妙な違和感が残る時がありますよね。
「......これ、誰が撮った?」
翌日の昼休み。
レンはスマホを机の上に置いた。
画面には、
昨夜カメラロールへ追加された写真。
海沿いを歩く三人。
その後ろに立つ、
白い制服姿の女子。
教室の空気が静かに重くなる。
黒川ユウトが顔をしかめた。
「いや普通に怖いって」
佐伯ナギは、
黙ったまま写真を見つめている。
レンが言った。
「俺、撮った覚えない」
「俺も。昨日スマホほとんど触ってねぇし」
ナギが小さく呟く。
「......位置情報ついてる」
「は?」
レンが確認する。
撮影時刻。
昨日の18時42分。
場所。
海沿いの遊歩道。
間違いなく、
三人でいた時間だった。
でも。
撮影端末の欄が空白になっていた。
「こんなことある?」
ユウトがスマホを覗き込む。
「普通機種名が出るだろ......」
その時。
ナギが画面を拡大した。
「これ」
写真の奥。
ガードレールの向こう側。
ぼやけた窓ガラスみたいな部分に、
もう一つ人影が映っていた。
「......四人じゃない」
レンの背筋が冷える。
そこには。
写真に写っている”誰か”の影が、
ぼんやり映っていた。
放課後。
三人は、
昨日の海沿いへ向かっていた。
夕方の潮風。
オレンジ色の空。
でも昨日と違って、
空気がやけに重い。
「ここだよな」
レンが立ち止まる。
写真と同じ場所。
同じ角度。
ユウトがスマホを構えた。
「試しに撮ってみる」
シャッター音。
すぐ確認する。
普通の写真。
誰も写っていない。
「......考えすぎか?」
そう言った瞬間。
カシャ。
また、
どこかでシャッター音が鳴った。
三人とも振り返る。
誰もいない。
波の音だけ。
ユウトが小さく言う。
「......今の俺じゃない」
レンの喉が乾く。
すると。
ナギが海の方を見たまま、
固まっていた。
「佐伯?」
返事がない。
ナギはゆっくり、
一点を指差した。
防波堤の向こう。
夕焼けの海。
その奥に。
白い制服姿が見えた。
風で揺れる長い髪。
ぼんやりした輪郭。
でも。
今度は、
レンにもはっきり見えた。
「......ミナ」
その瞬間。
スマホが震える。
三人同時だった。
通知。
思い出を保存しました
「っ......」
ユウトが顔を青ざめさせる。
レンが再び海を見る。
もうそこには、
誰もいなかった。
夜。
自室。
レンは何度も写真を見返していた。
昼には気づかなかった違和感。
写真の右下。
日時表示の横に、
小さな文字が追加されている。
4memories found
「......なんだよこれ」
タップする。
画面が暗転する。
読み込みマーク。
そして。
新しいアルバムが開かれた。
タイトル。
MINA
中に入っていた写真は、
全部で四枚。
一枚目。
今日の海の写真。
二枚目。
昨日の通話画面。
三枚目。
三年前の夏祭り。
暗い夜道。
ブレた画面。
その奥で。
こちらを見ているミナが、
小さく笑っていた。
次の瞬間。
画面がノイズ混じりに揺れる。
そして、
新しい通知が表示された。
アルバムが共有されました
共有者。
朝倉ミナ
読んでくださってありがとうございました。
今回は、
”写真に残る感じ”を少し強めに書いてみました。
あとから見返した写真って、
撮った時には気づかなかったものが見える時
ありますよね。
夏の夕方の海は綺麗なんですけど、
少しだけ不安になる空気もあって結構好きです。




