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既読がつかない夏  作者: 蒼空
夏休み前線

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11/40

第十一話  夏休み

第十一話です。


今回は少し、

夏休みっぽい空気を多めに書いてみました。


ずっと怖いことが続くより、

普通に笑ってる時間がある方が、

あとから思い返した時に怖かったりしますよね。

「暑っ......」


駅前に出た瞬間、

レンは顔をしかめた。


昼過ぎのアスファルトから、

熱気が揺れている。


「夏だなぁ」


隣で、

黒川ユウトが呑気に笑った。


その後ろから、

佐伯ナギが小さく言う。


「暑いの嫌い......」


「珍しく意見あったな」


「レンと一緒は嫌」


「ひど」


ユウトが吹き出した。


そんな、

どうでもいい会話。


でもレンは、

少しだけ安心していた。


最近ずっと、

ミナのことばかり考えていた気がする。


だから今日は、

できるだけ普通に過ごそうと思った。


三人はそのままゲームセンターへ入った。


冷房の風。


電子音。


騒がしい店内。


ユウトがクレーンゲームに千円を溶かして騒ぎ、

ナギが呆れ、

レンが笑う。


「お前絶対下手だろ」


「今のは台が悪い!」


「もう三回聞いた」


結局、

最後にナギが一発で景品を取った。


「え」


「うそ」


ナギは無言で、

取れた黒猫のキーホルダーを見ていた。


ユウトは騒ぐ。


「才能あるじゃん」


「......運」


「いや今のはうますぎたって」


少しだけ。


ナギが笑った。


その瞬間。


レンが初めて、

ちゃんと安心した気がした。



夕方。


三人は海沿いを歩いていた。


オレンジ色の空。


潮風。


遠くで鳴く蝉。


「夏休みって感じするな」


ユウトが言う。


レンも頷いてた。


本当に、

普通の夏みたいだった。


コンビニで買ったアイスを食べながら、

他愛ない話をする。


進路。


ゲーム。


恋愛の噂。


ユウトがニヤニヤしながら言った。


「で、レンは佐伯のことどう思ってんの?」


「は!?!?」


ナギが即座に睨む。


「気持ち悪いな」


「ダメージでか」


レンは思わず笑った。


その時。


カシャ。


「......?」


スマホのシャッター音。


レンは顔を上げる。


誰も撮っていない。


でも。


ナギもユウトも、

同時に周囲を見回した。


「今の......」


ユウトが眉をひそめる。


風が吹く。


誰もいない海沿い。


レンは妙に寒気を感じた。



夜。


別れ際。


「じゃ、また明日な」


ユウトが手を振る。


ナギも小さく会釈した。


その時。


レンのスマホが震える。


通知。


 新しい写真が追加されました


「......は?」


開く。


カメラロール。


今日撮った覚えのない写真が、

一枚だけ増えていた。


海沿いの道路。


夕焼け。


歩いているレンたち三人の後ろ姿。


そして。


その少し後ろ。


白い制服姿の女子が、

静かに立っていた。


レンの呼吸が止まる。


ズームする。


ぼやけた顔。


でも。


その笑い方だけは、

見覚えがあった。


次の瞬間。


写真が勝手にスクロールした。


もう一枚。


今度は、

四人分の影が写っていた。

読んでくださってありがとうございました。


今回は少し、

夏休みの空気を強めに入れてみました。


コンビニの帰りとか、

海沿いを歩いている時間って、

何でもないのに妙に記憶に残ってたりしますよね。


あと、

ゲームセンター回は書いていてかなり楽しかったです。

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